「信頼性の高い健康・栄養調査を目指して」
栄養疫学プログラム/国民健康・栄養調査プロジェクト


【目的】

 国や地方自治体が実施する健康・栄養調査は、国民や地域住民の健康増進施策の展開やその評価に欠かせない調査として位置づけられており、その殆どは周期的に実施されています。どのような調査でも同様ですが、できるだけ対象となる方々の協力率を高めるとともに、調査方法や手続きを工夫して、その信頼性を向上させることが求められます。当プロジェクトでは、健康増進法に基づく当研究所の法定業務である国民健康・栄養調査の集計業務にあわせて、これに関連した信頼性の高い健康・栄養調査を目指した研究にも積極的に取り組んでいます。

【取り組みの内容】

 行政が実施する健康・栄養調査で取り扱われる内容は、社会状況の変化に伴い複雑化しています。このため、設問の内容や回答書式が難しくなり、協力率の低下にもつながっていると指摘されています。そこで、調査対象の皆さんに調査の趣旨、調査内容、回答方法などについて、容易に理解していただけるよう、視覚を重視した説明資料(紙芝居様のプレゼンテーション資料)(図1)を作成し、実際の調査に携わる各地の保健所で活用していただいております。
 一方、栄養摂取状況調査(食事調査)では、対象者(対象世帯)の方に調査期間中、飲食した内容を記録していただき、これを調査担当者(管理栄養士など)が確認することで、できるだけ真の値に近い値を把握するように努めますが、これまで必ずしも全国的に統一された確認ツールは用いられていませんでした。当プロジェクトでは、調査担当者が適切に利用していただくことにより、最低限の調査精度を得ることができ、携帯性、費用対効果にも配慮した実物大の標準的図版ツール(図2)も作成しています。
 これらについては、保健所担当者に対してアンケートを実施し、得られた意見や要望により改良を重ね、最初の試作からおよそ3年をかけて、今年度に確定版を完成させることができました。

【今後の方向性】

 健康・栄養調査は、行政機関が実施するもの以外にも、研究レベルで実施されることも多く、その目的や得たいデータの内容や質によって、さまざまな方法が採用されています。しかし、何れの場合であっても、協力率の向上、調査方法の標準化、精度管理は欠かせません。これを行えば絶対という方法はおそらく永遠に見出すことはできないと思いますが、時代に対応したより望ましい方法を地道に研究することが大切であると考えています。
 今回ご紹介した以外の取り組みの一端は、研究所のホームページからご覧いただくことができます。
(健康・栄養調査に関する情報のページhttps://www.nih.go.jp/eiken/chosa/kenkoeiyo.html