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臨床栄養プログラム

3.進捗状況(成果)


a.メタボリックシンドロームプロジェクト

●各栄養素摂取量と遺伝子多型の相互作用の検討

 これまで罹患同胞対法を用いた全ゲノム解析と候補遺伝子アプローチを組み合わせた統合的解析によってPPARγ遺伝子、アディポネクチン遺伝子、PGC-1遺伝子、AMPKα2サブユニット遺伝子、HNF4α遺伝子、TCF7L2遺伝子とHHEX遺伝子が日本人におけるインスリン抵抗性や2型糖尿病の感受性遺伝子であることを明らかにした。さらに平成20年度はWhole Genome Association Studyによる解析から6回膜貫通型の電位依存性カリウムチャンネルであるKCNQ1が日本人の2型糖尿病感受性遺伝子であることを明らかにした。本遺伝子のリスクアリル頻度は0.4?0.6で、また糖尿病発症のオッズ比が1.3?1.4と非常に高く、今まで明らかにされた日本人の2型糖尿病感受性遺伝子の中でも最も主要な遺伝子の一つであると考えられた。さらにKCNQ1遺伝子多型はアジア人においても日本人と同様に2型糖尿病感受性遺伝子であることが確認された。その機能については、リスクアリル保持者ではインスリン抵抗性の指標であるHOMA-IRとは相関が認められなかったが、インスリン分泌能の指標であるHOMA-βが有意に低下していたことから、KCNQ1はインスリン分泌にかかわっている可能性が示唆された。


●基礎代謝に影響を与える遺伝素因の研究

 これまでに2型糖尿病を発症させやすくしていることが遺伝子多型を利用した患者対照相関解析によって明らかになった遺伝子で、その機能が未知のものについて、遺伝子欠損マウスを作製し解析を行った。当該遺伝子欠損マウスに対してインスリン負荷試験と糖負荷試験を行ったところ、インスリン抵抗性は認めず、インスリン分泌低下に伴う耐糖能異常を呈していることが明らかになった。インスリン分泌低下のメカニズムを明らかにするために、膵島の面積を検討したところコントロールマウスと差を認めなかったが、当該遺伝子欠損マウスから単離した膵島では、グルコース刺激後の細胞内Ca濃度が有意に低下しており、当該遺伝子はグルコース応答性インスリン分泌機構において重要な役割を果たしている可能性が示唆された。また、当該遺伝子SNP17の2型糖尿病リスクアリル保持者は非保持者に比べて遺伝子発現が低下していることを確認した。


b.栄養療法プロジェクト

●糖尿病の研究 (インスリン分泌を中心に)

 我々はこれまでに2型糖尿病モデル動物、肥満モデル動物を用いた検討から、高脂肪食誘導性のインスリン抵抗性に対する代償性インスリン分泌亢進において膵β細胞の代償性過形成が生じていること、その代償性過形成にインスリン受容体基質(IRS)-2が重要な役割を果たしていることを明らかにした。平成20年度は、その分子メカニズムをさらに解析するために、まずIRS-2欠損膵β細胞株の樹立を試みた。これまでに樹立したIRS-2flox/flox膵β細胞株にAdeno-Creを感染させると、Adeno-Cre濃度依存的にゲノムレベルでIRS-2が欠失し、さらにmRNAレベルや蛋白レベルでもIRS-2の発現は90%近く抑制された。一方同じファミリーであるIRS-1の発現には影響は認められず、IRS-2だけ欠損した膵β細胞株の樹立に成功した。このIRS-2欠損膵β細胞株を用いてグルコース応答性インスリン分泌について検討を行ったところ、Adeno-LacZを感染させたコントロール株とほぼ同程度に保たれていた。一方、細胞の増殖についてはコントロール群に比し、IRS-2を欠損した膵β細胞株では増殖が有意に障害されており、IRS-2が膵β細胞の機能ではなくむしろ増殖に関与していることが示唆された。


●メタボリックシンドロームの研究 (インスリン抵抗性を中心に)

 これまで、我々は血管内皮細胞において主要なIRSであるIRS-2に着目し、インスリン抵抗性と血管内皮機能について、血管内皮細胞特異的IRS-2欠損マウス(ETIRS2KOマウス)および高脂肪食誘導性肥満モデル動物を用いて検討を行った。その結果、血管内皮細胞のインスリンシグナル障害による血管内皮機能障害の結果、骨格筋の間質へのインスリンの移行が低下し、骨格筋の糖取り込みが低下するというメカニズムが存在することが示唆された。そこで平成20年度は、血管内皮機能改善薬をETIRS2KOマウスと高脂肪食誘導性肥満モデル動物に投与し、骨格筋のインスリン抵抗性が改善するかどうかについて検討した。ETIRS2KOに血管内皮機能改善薬を投与するとeNOSのmRNAと蛋白レベルがコントロールマウスの約2倍に増加した。また、ETIRS2KOで認めたインスリン刺激後のeNOSのリン酸化の低下は、コントロールマウスとほぼ同程度まで増加し、血管内皮機能が改善した。さらにETIRS2KOで認めた骨格筋の間質のインスリン濃度の低下は、血管内皮機能改善薬投与によりコントロールマウスとほぼ同程度まで増加し、骨格筋のインスリン抵抗性が改善した。同様に高脂肪食誘導性肥満モデル動物に血管内皮機能改善薬を投与したところ、高脂肪食誘導性肥満モデル動物で認めた血管内皮機能障害が改善し、骨格筋の間質のインスリン濃度がコントロールマウスと同程度まで増加し、骨格筋のインスリン抵抗性が改善した。以上の結果から血管内皮機能が骨格筋インスリン感受性調節に重要な役割を果たしていることが明らかになった。
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作成:2009/10/23 16:26:31 自動登録   閲覧数:3424
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