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長距離選手等の身体疲労の評価に関する研究


【はじめに】

 休養プロジェクトは、健康増進を目的とした運動や身体活動を無理なく継続的に行なえるように、適切な「休養」を提案することを大きな目標としています。しかし、運動による疲労感も休んだ後の回復感も主観的であり、客観的な評価は困難です。そこで、客観的な休養指標の開発に向かって色々な取り組みを行なっていますが、その一つである「長距離選手等の運動選手を被験者とし、継続的な肉体的負荷による身体疲労の変動を血清生化学検査及び非特異的免疫能により明らかにする」というテーマについて、最近の研究成果を報告します。


【疲労の客観的評価】

 短期的な肉体的負荷としてフルマラソンによる血液濃縮、血中逸脱酵素の増加、さらにサイトカインや好中球機能の変動から免疫にも影響が及ぶことを発表してきました。また、女子長距離選手20名とBMIで長距離選手に近い体格の一般女子学生21名を被験者として主観的疲労度、血中逸脱酵素活性、及び血液性状の変動を6ヶ月間検討し、運動選手と一般学生では主観的疲労度と血中逸脱酵素活性あるいは血液性状との間の相関関係が異なっていることを報告しました1)。

 一方、女子学生10名を被験者として身体活動が制限される場合として21日間の出納実験が主観的疲労度、血清生化学検査、及び非特異的免疫能に及ぼす影響を検討し、疲労感がある時や全体的にネガティブな気分の時は身体活動量が低下すること2)や出納実験中に生体内での好中球活性化の指標である血漿ミエロペルオキシダーゼ濃度は低下傾向を示し、非特異的免疫能である血清オプソニン化活性は出納実験中に増強し、血清イムノグロブリン(抗体)濃度との間に相関関係がないことを明らかにしました3)。


【免疫能と疲労との関係】

 これらの成果を踏まえて、女子長距離選手22名を被験者とし、走行距離が合計1,000km以上に及ぶ約2ヶ月間の夏期合宿が主観的疲労度、血清生化学検査、及び非特異的免疫能に及ぼす影響を検討しました4)。夏期合宿による若干の疲労感の増加は認められましたが、血中逸脱酵素活性等に著しい変動は認められず、調査した夏期合宿は選手に継続的な肉体的負荷による身体疲労が生じないように長年の経験によって計画・実行されていたと考えられます。しかし、血清オプソニン化活性、血漿ミエロペルオキシダーゼ濃度、及びサイトカインとしてG-CSF、IL-4、IL-6、IL-8、IL-10、及びTNFαを測定し、その結果をみると血清オプソニン化活性に有意の変動がみられ、IL-4、IL-6、及びIL-10は合宿後に有意に低下し、血清オプソニン化活性とIL-6の間に相関関係が認められました。このことから、主観的疲労度や血清生化学検査では認められにくい身体疲労を評価するのに、非特異的免疫能の測定が有効であると考えられます4)。


【今後の研究の方向】

 健康増進を目的とした運動を行なっている一般的な方々の中にも達成感のような気分の高揚によって疲れを感じ難くなっている方もおられると思います。今後は、さらに詳細な運動選手を被験者とした研究を行うとともに、一般的な方々が無理なく継続的に運動や身体活動を行なえるよう、研究成果を社会に還元したいと考えています。【健康増進プログラム/休養プロジェクト】




関連研究論文

1) 熊江 隆、金子佳代子、北村実穂子、小暮寛子、高田和子.女子長距離選手と一般女子学生の主観的疲労度、血中逸脱酵素活性、及び血液性状の6ヶ月間の変動と比較. 体力・栄養・免疫学雑誌16⑴:32-41. 2006.

2) 熊江 隆、西牟田守、児玉直子、吉武 裕.出納実験における女子大学生の主観的疲労度、血中逸脱酵素活性、及び血液性状の変動.―客観的な疲労度指標の開発に関する研究.―体力・栄養・免疫学雑誌16⑴:42-51. 2006.

3) Kumae T, Kogure H, Nishimuta M, Kodama N,Yoshitake Y, Eff ects of a 21 day metabolic study on serum opsonic activity in female college students,assessed by a chemiluminescence technique. Luminescence. 21: 256-261. 2006

ニュースレター「健康・栄養ニュース」第8巻1号(通巻28号)平成21年6月15日発行から転載
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作成:2009/8/21 15:18:22 自動登録   更新:2009/8/21 15:36:25 自動登録   閲覧数:7290
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