Welcome GUEST
重要なお知らせ
現在リニューアル中のため、これは閲覧のみの旧バージョンです。質問や検索はできませんのでご注意下さい。
トップ  >  食事  >  薬の飲み方と食事
薬の飲み方と食事

 一生薬と縁のない生活を送れる人は少ないでしょう。ある程度の年齢になれば、多くの人が高血圧症や腰痛症などの治療に薬を必要とします。薬物を長期間服用する場合に問題となるのが、薬物と食事との相互作用です。

 相互作用とは、分かりやすくいうと薬の「飲み合わせ」のことで、ある薬を他の薬と一緒に服用すると、その薬の効き目が単独で服用した場合と比べて変化してしまう現象です。相互作用のために薬の効果が増強すれば副作用を起こすかもしれませんし、効果が減弱すれば治療効果が失われることにもなりかねません。通常、食事は生活習慣病(成人病)の予防や治療の栄養療法の観点からとらえられることが多いのですが、薬の効きめを左右しかねない薬との相互作用も重要な問題です。

 薬が服用されてから作用部位に到達するまでには、消化管における「吸収」、血液に乗って全身に行き渡る「分布」、肝臓で分解される「代謝」、腎臓から尿の中に流し出される「排泄」の4過程を経なければなりません。この4過程を総称して体内薬物動態と呼びます。従って、食事が薬物の体内動態に何らかの影響を与えるとすれば、薬がその作用部位に到達する量と時間が変化するため、効きめの大きさや持続時間も変化する可能性があるわけです。

 食事による薬の吸収への影響については、お茶の成分であるタンニン酸が造血薬の鉄剤の吸収を妨害するとの説があまりに広く流布したため、食事が薬物の消化管吸収を妨害するような印象があるかもしれません。しかし、実際には薬物の消化管吸収が食事により重大な程妨害されることはむしろ少ないのです。また、お茶と鉄剤の組み合わせも、実際の治療効果に影響がでる程の問題ではないことが最近の研究で明らかとなりました。従って、薬を食後に飲むことは吸収の点で心配することはないのです。

 一方、稀な例として、ある種の抗生物質などをカルシウムが豊富な食事(牛乳、カルシウム食品など)とともに服用すると、薬とカルシウムイオンが結合し、消化管から吸収されなくなってしまうことがあります。また、多量の食物繊維を服用すると、ある種の抗血栓薬、強心薬、解熱薬と結合し、吸収を妨害することがあります。さらに、極めて脂肪に溶けやすい薬物では牛乳や脂肪に富む食事と服用すると、脂肪により分泌が促された胆汁によってミセル形成が促進され、消化管吸収が増加するものもあります。

 食事が影響するもう1つの体内動態の過程は、肝臓での薬物代謝です。低栄養、特にたんぱく質摂取が慢性的に不足している状態では肝臓での薬物代謝酵素の活性が低下します。慢性的な病気のため食事摂取が不十分な場合、点滴で栄養素を補給しますが、この場合の栄養源はブドウ糖が主体です。そのためアミノ酸を輸液で適切に補充しなければ肝臓での薬物解毒・除去能力が減少する危険があります。

 また、食事中の特殊な成分による薬物代謝への影響も知られています。最近、グレープフルーツジュースとカルシウム拮抗薬という高血圧の薬を一緒に服用すると、投与後1時間前後まで血圧が下がりすぎて「めまい」がする事例が話題になりました。これは、グレープフルーツに含まれる植物フラボノイドという天然物質が、消化管と肝臓に存在する上記薬物の代謝酵素の働きを妨害し、薬物の分解が遅れて体内の薬物量が高い状態が続くため、血圧を下げる作用が強く、また長く出現したためとされています。一方、焼肉などの焼け焦げや喫煙は、テオフィリンという喘息の治療薬等の薬物代謝を亢進させる現象もしられています。

 以上、薬の用い方を食事について相互作用の観点から概説しましたが、現在医家向けとしても1万種以上の薬物が市販されています。従って、食事と薬の飲み合わせや組み合わせも膨大な数に上ります。個別の薬物については主治医や薬剤師の方々から説明を受けるようにして下さい。 【越前宏俊】


(国立健康・栄養研究所編『第二版 健康・栄養-知っておきたい基礎知識-』第一出版、東京、2001収載。出版社の許可を得て転載)


■関連リンク(こちらもご参考にどうぞ)■
サプリメントと医薬品の相互作用
プリンタ用画面
友達に伝える
投票数:4 平均点:2.50
作成:2003/3/5 11:22:43 自動登録   更新:2009/2/12 16:58:30 自動登録   閲覧数:11236
前
母乳か、人工栄養か
カテゴリートップ
食事
次
消化吸収率と胃内停滞時間

メインメニュー