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母乳か、人工栄養か
 人も哺乳動物である以上、離乳が開始されるまでの生後4?6か月の間は、母乳は乳児にとって最適な唯一の栄養方法です。母乳には、乳児にとって生体利用効率のよい種々の栄養素だけでなく、重要な生理活性物質である種々の酵素、ホルモン、成長因子、抗体、免疫物質、抗炎症物質なども含まれています。特に、分娩後3?5日の間に分泌される初乳には、分泌型の免疫グロブリンAが多く含まれており、新生児の未熟な腸管に付着することによって感染防御に役立っていると考えられています。

 一方で、母乳栄養による問題点としては、母乳中のビタミンK濃度が低いことによって起こるとされている、新生児期の出血性疾患や、HIV・成人T細胞白血病ウィルスなどの感染の危険性を増加させること、有機塩素系化合物などの環境汚染物質が母乳を介して乳児に移行することなどがあげられます。しかし、現在ではほとんどの新生児に対して予防的にビタミンK製剤の投与が行われており、母乳栄養による出血性疾患の危険性は非常に低くなっています。

 人工乳(乳児用調製粉乳)は、母親の病気などを含めた様々な理由で、母乳栄養が困難な状況において、母乳の代替品として用いられます。多くの製品は牛乳を原料につくられていますが、現在では母乳に近い栄養素組成となるように開発されています。このため、先進国では母乳栄養児と人工栄養児では発育や罹患率に大差がありません。しかし、乳児死亡率の高い発展途上国においては、調乳の際に用いられる飲料水の安全性の問題などから、人工栄養が下痢症などによる乳児死亡の危険性を増加させているとの指摘もあります。

 母乳栄養は、母子関係の成立へのきっかけとなることや、児の免疫能を高める効果がある乳児にとって最もふさわしい栄養であることは確かです。女性を取り巻く現代の環境は、必ずしも母乳栄養の継続に好ましいものではありませんが、出産直後の母親が自然に母乳栄養を実行できるような環境づくりが重要であると考えられます。【瀧本秀美】


(国立健康・栄養研究所編『第二版 健康・栄養-知っておきたい基礎知識-』第一出版、東京、2001収載。出版社の許可を得て転載)


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作成:2003/3/5 11:19:58 自動登録   更新:2009/2/12 16:55:32 自動登録   閲覧数:17114
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