ホルミウム-166-キトサン複合体を用いた単独大型肝細胞がん患者に対する経管的治療・第2相試験

【目的】 ホルミウム-166は中性子によって活性化される放射性同位元素であり、肝細胞がん(HCC)に対する効果が1991年に発表された前臨床段階の研究において明らかにされている。キトサンは2-脱酸素2アミノDグルコースの重合体であるが、重金属と容易にキレートを形成しそして酸性下の環境では平衡及び基底状態で液状からジェル状に変換される。我々は経動脈的な方法を用いて放射性医薬品ホルミウム-166-キトサン複合体を単独かつ大型のHCCのある患者において投与した。

【患者と方法】 単一かつ広範囲のHCC(3cm以上)を有しかつ血管短絡のない患者で、手術不能もしくは手術を拒否するもの54人を対象に検討した。166Ho-キトサン複合体は動脈を経由し腫瘍に直接投与され、用量は腫瘍の直径1cm当たり20mCi用いられた(上限200mCi)。

【結果】 腫瘍サイズの中央値は5.3cm(範囲3?13cm)であった。治療反応率は78%(42/54)で、31人において完全な反応率(中央値27ヶ月)が見られた。グレード3及びグレード4の白血球減少症の発症率は18.6%であり、貧血は7.4%、血小板減少症27.8%、AST/ALT値の上昇が26%/24%、総ビルビリン値が27.8%で上昇した。2例の治療関連の死亡が確認された(3.7%)。下位集団に関する検討では腫瘍の大きさによって分類された2群(3?5cm対5cm以上)において反応率(P=0.004)と全般的な死亡率(P=0.02)において相当程度の違いが見られた。

【結論】 我々は166Ho-キトサン複合体の経管的適用によるHCC治療は、特に腫瘍サイズが3?5cmの患者において、受容可能な程度の毒性とともに非常に高い割合での効果性があることを見いだした。

Sohn.JH, Choi.HJ, Lee.JT, Lee.JD, Kim.JH, Moon.YM, Park.K, Park.KB, Kim.E, Yoo.NC: Phase II Study of Transarterial Holmium-166-Chitosan Complex Treatment in Patients with a Single, Large Hepatocellular Carcinoma. Oncology 2008 Nov 17;76(1):1-9. PMID: 19018149 登録: 2008.11.2