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脂身で太るは間違い?

脂身で太るは間違い?

 ハーバード大学教授のW.C.ウィレット博士は、2002年の『肥満レビューズ』(Willett, W.C.: Obesity Rev., 3: 59-68, 2002)に、「食事由来の脂肪は肥満の原因か:いいえ」という論文を寄稿した。その内容は次のようなものである(以下は論文の要約を適宜説明を補って翻案した)。

 ヒトが摂取する食事中の脂肪に由来するエネルギー比率は、体脂肪(ヒトの身体の脂肪)の量を決める重要な因子だといわれてきた。また、そのせいで、低脂肪ダイエットはよいものだという概念を人々に植え付けることになってしまった。

 確かに、食事由来の脂肪摂取量と肥満者の割合は、低開発国では、先進国に比べて低いのだが、こうした対比は、運動量や手に入る食物がぜんぜん違うことをぜんぜん考慮していないと、ウィレットはいう。

 同じような経済状態にある国同士を比較すれば、脂肪摂取と肥満の正の相関関係はなくなってしまうではないか、と。

 無作為抽出対照試験は実際体脂肪に及ぼす食事由来の脂肪の効果を知る上でとてもよい方法だと思うけれども、いくつかの短期試験では、脂肪の摂取量を減らしても、体重の減少は本当にわずかだった。これらの試験のメタ分析(複数の研究をまとめて結果を抽出する分析法)の結果からは、脂肪エネルギー比率を10%減らすと、一日16グラムの体重減少が起こり、18ヵ月後には9 kg減量できることになるが、実際には代償作用(体重減少に抵抗しようとする体の働き)が現れて、たとえ脂肪エネルギー比率を低く保っていたとしても、そんなに体重減少を維持していることはできないという長期試験の結果が得られている。一年経つと最大の減少時より体重増加のあるのが(論文の結果に)一般的で、結局、低脂肪ダイエットによる体重減少は効果を積み重ねていけるようなものではないということだ。

 さらに、この20年来、アメリカでは脂肪の摂取量は低下を続けている。肥満は増加しているにもかかわらず、だ。同様の傾向は、他の先進諸国でも観察されている。食事由来の脂肪は、西欧諸国で見られる、この過剰な体脂肪の要因にはなっていないのだ。脂肪の摂取を減らしても益がないし、かえって問題を紛糾させるだけだろう。 

 というわけで、脂肪の摂取量を減らす努力(つまりは低脂肪ダイエットも)は、健康にもよくないし、肥満問題の解決を遅らせるだけだ、というのがウィレットの主張である。

 これはある意味ではかなり過激な主張だ。そのためか、昨年はニューズウィーク誌にも取り上げられて、日本語版にも載ったので、ご覧になった方も多いのではないだろうか。ウィレット教授といえば、食事調査の世界的権威者であり、マーガリン中に含まれるトランス脂肪酸の人体への悪影響なども強く主張する人物である。彼の、脂肪を制限しても無駄だという言葉は、やはりそれなりの重みを持つだろう。

低脂肪ダイエットは良いよ!

 これに対して、デンマークのアストループ博士は、世界肥満タスクフォースの議長を勤める肥満医学の権威である。話が若干前後するが、2001年の『国際肥満雑誌』(Astrup, A: Int. J. Obesity, 25(Suppl. 1): S46-S50, 2001)に、デンマーク王立人類栄養学研究所所長のアストループ博士は、「肥満の治療と予防における食事由来の脂肪の役割。低脂肪ダイエットの効能と安全性」という論文を寄稿した。その内容は次のようなものである(以下は論文の要約を適宜説明を補って翻案した)。

 食事由来の脂肪は、本当に体重増加や肥満の主要な因子なのでしょうか? 低脂肪ダイエットをすると血中脂質に悪い影響が起こるというのは本当でしょうか? というのが論文の主題だ。

 で、それを調べるために、いろいろな証拠集めをしたという。特に自由に、低脂肪で高炭水化物高たんぱく質のダイエット(食事というほどの意味ですが)をしたときの肥満治療(予防)に対する効果と安全性はどうかということに重点が置かれた。

 その結果、まず、生理学的な研究は脂質、炭水化物、たんぱく質のエネルギー比率を変えることで何が起こるのかを教えてくれたという。すなわち、

(1)脂肪というのは炭水化物ほど食欲を満足させてくれないので、脂肪が多目の食事は、自然と過食しやすくなる。その結果エネルギー過多になって太る。

(2)脂肪は腸からの吸収がよいので、そのまま大便中に出てしまう割合も少ない(つまりたくさん体内にエネルギーが取り込まれる)。

(3)炭水化物は熱産生が脂肪よりも多い(つまり発熱してエネルギーを消費してしまう割合が高い)ので炭水化物が多目の食事より脂肪が多目の食事の方がたくさんエネルギーを摂ったことになってしまう。論文中には、ヒューマンカロリーメータというヒトを部屋の中に長時間入れて酸素消費量と二酸化炭素発生量からどれくらいエネルギーを消費したかを測る装置(栄養研にもある)の実験結果のグラフが引かれていて、睡眠時エネルギー消費量が、炭水化物が多目の食事の場合、ほんのわずかだが、実際にあがっていることが示されている。

 上記のうちの(2)と(3)は同じエネルギーしか摂取しなくてもということで、(1)は要するにたくさん食べちゃうということだ。

 で、無作為抽出介入試験という、より厳密な方法で行われた研究では、低脂肪ダイエットを割り当てられた群では、正常人なら体重増加が防止され、過体重の人では体重減少が見られた。

 アストループらが行った低脂肪自由摂取研究のメタ分析では、全部で16の研究に1728人の被験者がいたのだが、コントロール群(低脂肪ダイエットをさせなかった群)と介入群(低脂肪ダイエット群)では平均体重に2.5 kgの差が有ったという。そして実際体重減少は脂肪摂取量の減少と関係していたという(図をよく見るとそんなにうまく減っているようにはみえないが、とりあえず)。

 結論として、アメリカン・パラドックスなるもの、つまりこの数十年の間に、アメリカ人の脂肪消費量は減っているのに、肥満は増加しつづけているという事実は、運動をしなくなっただけのことだと断言している。運動しなくなり方が大きいので、ついでに脂肪の消費量も減ったのだ、と。低脂肪で食物繊維とたんぱく質の多い食事は心臓循環器系に悪い作用は見られず、高い危険率をもつ人々の死亡率を低下させるであろう。

 アメリカン・パラドックスの話がちょっと唐突で、本文にも一度も出てきてないような気がするが、アストループの主張はおわかりいただけたと思う。低脂肪ダイエットは健康によくて、好きなだけ(といっても、好きなだけ食べろと指導はされていないと思うけど)食べさせても、やせるというのだ。

 これはわりとわかりやすい話ではないか? 低脂肪ダイエットの教科書その、まんま、という感じで。

 だが、同じ無作為抽出試験を対象にしているはずなのに、どうしてウィレットは効果がないといい、アストループは効果があるというのだろうか? 次回は論文そのものをもう少し詳細に検討してみることにする(次回はしかしいつのことか未定だが)。
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作成:2004/1/4 11:04:07 自動登録   更新:2009/1/20 11:45:24 自動登録   閲覧数:9879
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