30?0(サーティ・ラブ)ダイエットで健康にやせよう!

アトキンスの低炭水化物ダイエット、別名セレブ御用達のハリウッド・ダイエット、が相変わらず欧米のマスコミをにぎわしているようだが、最近、栄養学界の中では、中程度脂肪ダイエットを見直す動きが高まりつつあるようだ。ニューヨーク州立大学のクリスチーネ・L・ペルクマン(Christine L. Pelkman)らの低脂肪ダイエット(脂肪エネルギー比率:18%)と中程度脂肪ダイエット(同:33%)の血清脂質プロフィールへの影響を比較検討した論文が『米国臨床栄養学雑誌』79巻に掲載されている(Pelkman, CL et al.: Effects of moderate-fat (from monounsaturated fat) and low-fat weight-loss diets on the serum lipit profile in overweight and obese men and women. Am J Clin Nutr, 79:204-12 (2004)。

一般的に、血清脂質が高いと心臓血管系に悪い影響を与えると言われている。しかし詳細な血清脂質プロフィール(どんな種類がどのくらいあるか)を見ていくと、善玉コレステロールとも呼ばれるHDL(高密度リポたんぱく質)-コレステロールのように、値が高いほうがからだに良いと考えられているものもある。ペルクマンらは、脂質の割合を調節した献立を用いて、摂取カロリーは一定のままで、からだに良いとされる一価不飽和脂肪酸を多めに摂取した場合としない場合の違いを検討した。

対象者はBMIが平均30の健康な男女53人で、6週間にわたってすべての食事を提供され、厳密な体重コントロールを受けながら行なわれた。つまり、低脂肪ダイエットと中程度脂肪ダイエットで、ダイエットの効果には差がないようになっており、実際に体重減少量も減少の仕方にも違いは現れていない。

そのようにコントロールされた状態であれば、どちらの方法でも体重が減らせるわけであるが、そうであるからこそ、ダイエット法の真の良し悪しがわかるというわけだ。もちろんこの場合、健康を害さないあるいは積極的に健康寿命を延ばすようなダイエットが、真に良いダイエットである。

真に良いダイエットであるというのはどういうことかを具体的にいうと、HDL-コレステロール値が低下せずに、総コレステロール値、トリグリセライド値が低下する、ということだ。心臓血管系に良い影響を与える方向でダイエットがなされているということである。検討の結果、中程度脂肪ダイエットではそのような結果が得られたが、低脂肪ダイエットの場合、HDL-コレステロール値が低下し、トリグリセライド値は最初は低下していたのが最終的には元よりも高くなってしまった。したがって中程度脂肪ダイエットのほうが健康に良いという結論になる。

これでまた低脂肪ダイエット(高炭水化物ダイエット)より中程度脂肪ダイエットのほうが良いという結果が増えたということだろうか。ただ、この論文ではあくまでも一価不飽和脂肪酸の多い食事なのであり、決して(飽和脂肪酸の多い動物の)脂身をたらふく食っているわけではないのでご注意を。

論文には、一日1800キロカロリーのサンプル献立も載っているので、ご興味のある向きは参考にされたい。論文には体重減少がグラフで示されている。平均値ではあるが、週1キログラムずつ、少しも停滞することなく8週間で8キログラム。栄養学のプロの手にかかれば、こんなにきれいに減量できるものなんですね。