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トップ  >  食事  >  ミニレビュー:いわゆる健康食品素材中のアレルギー誘発物質
健康食品にはアトピーを治すものもあるかもしれないが、アレルギーを起こすものも確実に存在する。だがその実態は不明瞭である。ここでは文献的に知られている健康食品アレルギーの実態をまとめた。
ここでとりあげたのは あくまでも素材自身であり、なんらかの商品を差すものではない。素材としての情報であるため、健康食品として使用されていないケースも多く取り上げてある。したがって、ある健康食品がこの素材を含むからといって 即アレルギーの危険性があるというものではない。






いわゆる健康食品素材中のアレルギー誘発物質について

廣 田 晃 一(国立健康・栄養研究所 健康栄養情報・教育研究部)


1. 概論

 多くの食品がアレルギーの原因になることはよく知られている。いわゆる健康食品とてもその例外ではない。大豆(1-17)やにんにく(18-51)のようにアレルギーを起こす食品を素材としているものは当然としても、グアーガム(52-56)やキチン・キトサン(57,58)のような多糖類素材、茶(59-63)、グアバ茶(64)や桑茶(65-70)のような茶素材など、どちらかというとアレルギーを治すために使われそうな食品素材にもアレルギー症例の報告が存在する。通常このような素材を精製加工して用いた場合に、アレルゲンは分解、変性、除去されていって、一般的には減少する可能性が高いと思われるが、大豆外皮の主要アレルゲンのひとつであるGly m1, m2のように、加熱することでかえってIgEとの親和性が高くなる場合もある(14)。

 アレルギーをおこすアレルゲンはたんぱく質であることが多いが、ペニシリンのような低分子の薬剤や、抗凝固剤であるヘパリンのような多糖類でもアレルギーが誘発される場合がある。したがってどのような健康食品がアレルギーを誘発しやすい傾向があるかは一概には決められない。しかし多くの食物アレルゲンがたんぱく質であることを考えると、たんぱく質を多く含む健康食品のほうが、よりアレルギーを誘発しやすいとはいえるかもしれない。しかし現状では、アレルギーが実際に起こらなければ、その健康食品がアレルギーを誘発するかどうかはわからない。健康食品素材と一口にいっても、その種類は多様であり、その加工法も千差万別である。卵や牛乳とは異なり、健康食品は元来食べる必要がないものなので、必然的にアレルギーの症例も少なくなる。しかし、それは健康食品がアレルギーを起こしにくいためでは決してない。健康食品素材の中には食品以外の用途に使用されるものも少なくないが、そのような場合に、製造工場における職業性喘息(52-56,71,72)の報告されているものもある。


【検索した食品素材リスト】


《A.一般的な健康食品素材》 アロエ/イチョウ/カプサイシン/ガルシニア/Cat's claw/クロレラ/桑/ケール/コラーゲン/ざくろ/シルク/スピルリナ/セラミド/朝鮮人参/月見草油/ドコサヘキサエン酸/にんにく/バナバ茶ポリフェノール/ヒアルロン酸/ビタミンE/ひまわりの種/プロポリス/マテ茶/メラトニン/ラクトバシルス/卵油/霊芝/レシチン/ロイヤルゼリー


《B.特定保健用食品に用いられている食品素材》
アルギン酸ナトリウム/オリゴ糖/キトサン/グアーガム/サイリウム/ジアシルグリセロール/大豆たんぱく質/茶/グアバ茶ポリフェノール/難消化性デキストリン/valyl-チロシン/かつお節オリゴペプチド


 さて、PubMedを利用して、健康食品中のアレルゲンについての文献を上記リストの41素材について検索したところ、


アロエ(73-76)/イチョウ(77-82)/カプサイシン(83-102)/クロレラ(103-106)/桑(65-70)/コラーゲン(107-109)/ざくろ(110-113)/シルク(114-135)/朝鮮人参(136)/にんにく(18-51)/ひまわり(137-173)/ロイヤルゼリー(174-185)/キトサン(57,58)/グアーガム(52-56)/サイリウム(186-211)/大豆たんぱく質(1-17)/茶ポリフェノール(59-63)/グアバ茶ポリフェノール(64)/霊芝(212-214)/プロポリス(215-249)/ヒアルロン酸(250,251)/レシチン(252-256)


の計22種類(54%)の素材についてアレルギー反応を誘発したかまたはその疑いがあるという報告が見つかった。またウェスタンブロット等によってアレルゲンの同定されているものも数種あった。


 これらの文献はすべて人を対象としたものに限っており、したがってなんらかの過敏反応が人で起きたのは間違いないが、中にはその素材が原因物質に推定されているだけで証明されていないものも含まれている。また一、二例しか報告がないという素材もある。しかし、これらは主として英語圏の文献を収集したPubMedにおける検索結果であり、とりあげた素材によっては欧米での使用が一般的ではないものもあると思われることから、実際にはもっと多数の素材がアレルゲンを含有している可能性がある。


 ところで、これらアレルゲンの実体はなんであろうか。一般的に、たんぱく質、ペプチドがアレルゲンになることは良く知られている。大豆たんぱく質はその典型的な例である。アレルギーの報告のある健康食品素材の中にはたんぱく質が含まれているとは考えにくいものも多数存在するが、実際には電気泳動等によって検出されるたんぱく質を含んでいることも多く、それがアレルゲンとなっている場合もあると思われる。


 また、ハプテンのように低分子量の化合物がアルブミンのようなたんぱく質と結合することによってアレルゲンとなる可能性がある。製茶工場における職業性喘息は多数報告されているが、その原因となるアレルゲンとして茶抽出液中のエピガロカテキンが示唆されている(61,62)のは、その一例かもしれない。グアバ茶の場合にはタンニンとたんぱく質がアレルゲンであるという報告もある(64)。またイチョウ果実(銀杏)中のギンコール酸が主要アレルゲンとして同定されている(78)。


 アルギン酸ナトリウム(71,72)、グアーガム(52-64)、キトサン(57,58)等に工場等での職業性の曝露による喘息が多数報告されている。これらはすべて多糖類であるが、高度に精製された純粋な多糖類というよりは種皮や甲殻からの部分精製品であることが多いので、やはりたんぱく質などの夾雑物がアレルゲンであるかもしれない。しかし、多糖類に関してはまだアレルゲンを同定した報告は存在しないようである。


 またカプサイシン(83-102)のように抗原抗体反応とは別の経路で作用している場合もある。カプサイシンが咳を誘発するメカニズムは、咳をひきおこす知覚神経系の無髄線維のC線維をカプサイシンが刺激することによって起こるものである。


 しかし、実のところ、上記の例以外には、アレルギーの報告はあっても、アレルゲンが同定されているものはほとんどない。食品素材そのものにアレルゲンが含まれるのか、素材の精製過程で残存あるいは混入する夾雑物にアレルゲンが含まれるのかの区別もできない症例がほとんどである。

 今後健康食品利用の増加に伴い、アレルギーの症例も増加することが予想される。アレルギーを起こさないためには、その食品を食べないことである。そのためには、アレルギーに関する情報を広く流したり、製品へのラベル表示を徹底するための方策がとられる必要があると思われる。そして、そのためにアレルゲンの同定を進めていくことがまず必要であろう。

2. 引用文献

 文献リストが長過ぎてデータベースに収まらなかったので、こちらのリンクからご覧下さい。
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作成:2003/5/15 14:01:44 自動登録   更新:2008/9/1 15:05:17 自動登録   閲覧数:4766
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