スポーツで健康増進


 運動・スポーツを行うことで健康度がアップすることは誰もが知っていますが、なぜ、そうなるかという仕組みはほとんどわかっていません。本研究では、トレーニングが、肥満予防で重要な筋肉の新陳代謝を活性化させる蛋白質(ミトコンドリアの酸化系酵素)が、どのようにしてトレーニングによって増加するかを明らかにすることを目的としました。

 最近、このミトコンドリアの蛋白質を増加させる可能性があるとして、注目されているPGC-1 という物質を対象にしました。その結果、この物質(蛋白質)は、運動中に活動する筋肉のみで増加することがわかりました。さらに、ネズミから筋肉を取り出して、試験管内で電気刺激して収縮させても、この物質が増加することがわかりました。また、運動の強さが強いほど、多くなることもわかりました。この研究でモデルとなった高い強度の運動は、バスケットボールやテニスなどのスポーツ活動中に主に見られるものです。

 つまり、この研究は、従来、我が国では、健康増進という観点ではあまり注目されなかったスポーツ活動が、生活習慣病予防、特に肥満や糖尿病の予防効果が期待される理論的根拠が明らかにしたことになります。

 若い頃にスポーツをやっていた人は、中年になっても、慣れ親しんだスポーツを年相応な形で楽しみましょう。また、中年,高齢の方でも、積極的に新しいスポーツ活動に挑戦しましょう。60 歳を超えてからバドミントンを始めて楽しんでいらっしゃるかたもたくさんいます。




出典:Effects of low-intensity prolonged exercise on PGC-1 expression in rat epitrochlearis muscle. Terada S, M Goto, M Kato, K Kawanaka, T Shimokawa, I Tabata. Biochem Biophys Res Commun. 296:350-354,2002

ニュースレター「健康・栄養ニュース」第1巻2号(通巻2号)平成15年1月30日発行から転載