あなたはごはん派? それともパン派?

 最近、お米(ごはん)の栄養価が再評価されているようです。

 しかし、われわれはごはんだけ、パンだけを食べているわけではありません。ごはんのときにはごはんに合うおかずを、パンのときにはパンに合う食べ物を無意識のうちに選んでいます。人間の栄養とはその全体のことをいいます。

 そこで、ひとつの食品の栄養価ではなく、毎日食べている食品すべてから摂取している栄養素をごはん派とパン派に分けて調べてみることにしました。

 お願いしたのは、1771 人の18 歳から20 歳までの女子大学生です。過去1か月間に食べたものを詳しく尋ね、朝ごはんの主食に注目して、ごはん派とパン派に分類しました。めん類を食べたひとがわずかにいましたが、とても少なかったため、「米飯の頻度(回/ 週)?パンの頻度(回/ 週)」を計算し、完全パン派(毎朝パンを食べていたひとたち)から完全ごはん派(毎朝ごはんを食べていたひとたち)まで、8グループに分けました。

 8つのグループの栄養素摂取量を比較したのが下の図です。ごはんの頻度が増えるほど、n-3 系多価不飽和脂肪酸、鉄、ナトリウム( 食塩)、蛋白質、カロテン( カロチンとも呼ばれます)、カリウム、食物繊維、ビタミンCといった栄養素の摂取量が多いことがわかります。反対に、ごはん摂取頻度が多いほど、脂質の摂取量が少なく、脂質の中でも飽和脂肪酸と呼ばれる種類の脂質の摂取量が特に少ないことがわかりました。

 ごはん派で摂取量が多かった栄養素は、ナトリウム(食塩)を除き、いわゆる生活習慣病の予防に働く可能性が指摘されているものばかりです。一方、飽和脂肪酸は高脂血症の原因のひとつとして、その過剰摂取が懸念されている栄養素です。しかし、ごはん派が満点だったわけではありません。ごはん派で多かったナトリウム(食塩)は大きな問題です。なぜなら、日本人の食塩摂取量は他の先進諸国と比べると際立って多く、食塩は、その制限(減塩)の必要性が再三、強調されている栄養素だからです。

 この結果から、ごはん派のひとは高塩分という問題はあるものの、全体としては、生活習慣病の予防に働く栄養素を、パン派のひとたちよりもたくさん食べていることがわかりました。

 注意したいのは、この結果が示すところは、ごはんさえ食べていれば良いというわけでも、パンが悪い食品であるといっているわけでもないということです。ごはんを食べるときに何を食べるか、また、パンを食べるときには何を添えれば良いかをよく考えて毎日の食事を楽しんでいただきたいと思います。【佐々木 敏】



出典: Sasaki S, Shimoda T, Katagiri A, et al.Eating frequency of rice vs. bread at breakfast and nutrient and food-group intake among Japanesefemale college students. J Community Nutr 2002;
4: 83-9

ニュースレター「健康・栄養ニュース」第2巻1号(通巻4号)平成15年6月15日発行から転載