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理想的な研究スタイル

 クロード・ブシャール博士(Dr. Claude Bouchard)は、アメリカ・ルイジアナ州にあるペニントン医科学研究センター(Pennington Biomedical ResearchCenter)の所長(Executive Director)である。

 一卵性双生児12 組において100 日間にわたる1,000kcal/ 日の過食の影響をみた研究などがあり、厳密な実験計画に基づいて、身体組成や体力、エネルギー代謝、脂質代謝等の遺伝・環境要因について研究を進めてきた。

 その彼のもとへ、2000 年の3 月半ばから10ヶ月間留学する機会を得た。ここでは、彼の代表的な研究であるHERITAGE Family Studyについてふれたい。これは、20 週間にわたる有酸素運動の影響に個人差をもたらす遺伝・環境要因に関する研究である。

 運動の影響について実験的に検討したこれまでの研究の被験者数は、運動継続の難しさもあって、数名?数十名であった。しかし、これでは遺伝子多型・変異の解析には少な過ぎる。そこで、4 つの研究施設の共同研究として、合計742 名の被験者を確保した。

 施設によって異なった測定値が得られる危険性があるので、各施設から測定責任者を集めた講習会を実施し、入念な精度管理を行った。更に、4 人が被験者となって4つの研究施設を回り、測定値を施設間で比較し問題点をチェックした。このツアーは2回実施された。

 1 年以上にわたるそうした入念な準備の後、厳密な管理と脱落者を少なくする配慮の下で、第1 期(5 年間)中に20 週間の運動が行われた。その際、身体組成や体力、各種代謝マーカー等、多数の項目について良質のデータがとられた。その後、被験者を追加せず、解析のためだけに数億円単位の予算が2回つけられた(現在、第3 期)。その間、保存されている血液を用いた遺伝子解析結果等を加えて、様々な角度から分析が進められている。研究開始後10 年以上が過ぎた今年の初め、この研究の論文数は100を越えた。

 一般に、いくつもの研究グループが、被験者数や測定項目を含む実験計画に問題をかかえながら、別個にデータをとっていることが多い。しかし、HERITAGE Family Studyのように、時間と労力をかけきちんとした実験計画に基づいてデータをとれば、そこから得られるものは飛躍的に多くなるはずである。

 簡単ではないが、この姿勢は見習いたいと思っている。【田中茂穂】



ニュースレター「健康・栄養ニュース」第2巻1号(通巻4号)平成15年6月15日発行から転載
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作成:2008/7/17 14:12:43 自動登録   更新:2009/2/10 15:21:04 自動登録   閲覧数:4788
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