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脂肪細胞を肥大化させる遺伝子Mest

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 肥満は2型糖尿病をはじめとして動脈硬化症、高血圧症や高脂血症などの病気を引き起こすことから、病気の温床ともいえます。

 それでは、なぜ肥満は他の病気を引き起こすのでしょうか?

 肥満は単に標準体重より重いことではなく、体脂肪が過剰に蓄積した状態で、脂肪細胞の数が増えたり、脂肪細胞自体が大きくなったりする状態のことをいいます。特に、肝臓や腸などが納まっている体腔内に貯えられる内臓脂肪の細胞が肥大することにより、2型糖尿病や動脈硬化症、高血圧症・高脂血症を発症することが分かってきました。

 脂肪細胞は、内分泌臓器として色々な生理活性物質やホルモンに似た物質を産生分泌しているのです。これらは総称してアディポサイトカイン(Adipo-cytokines)といいますが、このアディポサイトカインは体内における糖代謝や脂質代謝の調節に関与しています。しかし肥大した脂肪細胞からは異常な量の悪玉アディポサイトカインが分泌されて、糖代謝や脂質代謝を乱してしまう結果、さまざまな病気を引き起こすのです。

 すなわち、肥満が病気の温床といわれる原因を探る鍵は脂肪細胞にあるのです。そこで私達はマウスの内臓脂肪の細胞でどのような遺伝子が変化しているかを検討し、高脂肪食によって肥満したマウスや、遺伝的に肥満で糖尿病のマウスの脂肪ではMestという遺伝子が著しく発現増加していることに着目しました。そしてMestが脂肪細胞において、どのような働きをしているのかを知るために、さまざまな実験を行いました。

 その結果、Mestは脂肪以外の組織ではほとんど発現が認められず、肥満マウスの脂肪細胞でのみ著しく発現が増加していました。肥満はしばしば糖代謝異常を伴いますが、Mestは血糖の調節よりむしろ肥満そのものに深く関与していることを明らかにしました。

 一方、遺伝的に肥満で糖尿病のマウスに2型糖尿病の薬であるピオグリタゾンを投与した実験から、肥大化した脂肪細胞が小型化するとMestの発現も低下していることがわかりました。

 さらにMestを過剰発現させた培養細胞の実験からはMestが脂肪細胞に特異的な遺伝子(これにはアディポサイトカインの遺伝子も含まれます)の発現を促すことが明らかになったので、脂肪細胞にMestを過剰発現させたトランスジェニックマウスを作成し、生体内でのMestの働きを検討しました。すると、このトランスジェニックマウスでは脂肪特異的な遺伝子の発現が増加したうえに、脂肪細胞の肥大化が認められました。

 つまりMestが脂肪細胞の肥大化をおこすとともに、悪玉アディポサイトカインの発現の増加を招くことが明らかになったのです。逆に考えれば、Mestの発現を抑制することは脂肪細胞の肥大化を防ぎ、アディポサイトカインの異常な分泌をも抑制することにつながることが示唆されたわけです。

 したがって、Mestを標的とした薬を作れば、肥満やこれにともなう様々な病気を防げるかもしれません。【江崎 治】



出典:Takahashi M, Kamei Y, Ezaki O. Mest/Peg1 imprinted gene enlarges adipocytes and is a marker of adipocyte size. Am J Physiol Endocrinol Metab. 2004 Sep7[ Epub ahead of print]

ニュースレター「健康・栄養ニュース」第3巻3号(通巻10号)平成16年12月15日発行から転載


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作成:2008/7/7 13:29:42 自動登録   更新:2009/2/9 10:03:50 自動登録   閲覧数:6875
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