抗酸化能を有する微量元素量が加齢によって減少する傾向にある


 老化の進行を早める後天的環境因子として各種ストレス、紫外線、放射線、栄養、煙草、酒などがありますが、これらの諸環境の下で長い間に体内代謝を通じて生産・蓄積したスーパーオキシドなどの活性酸素は、細胞膜などの脂質過酸化反応、細胞質・膜たんぱく質の変性、酵素の障害、細胞内小器官さらには細胞そのものを障害することが注目されています。

 このような細胞成分の過酸化連鎖を防ぐために、体内ではスーパーオキシドジスムターゼ、NADPH・GSH系などの抗酸化機能が働いていますが、そのためにはセレン、銅、亜鉛、マンガンなどのいわゆる抗酸化に関与する元素が必要です。

 そこで、体内の抗酸化元素量が加齢や生活環境などによってどのように変化しているかを、年齢26?79歳の健常者(定期健診の際に研究の趣旨を述べ、同意を得ている)、合計170名(男62名、女108名)の血液中の亜鉛(Zn)、銅(Cu)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、セレン(Se)、クロム(Cr)、コバルト(Co)の7元素を誘導結合プラズマ質量分析法(ICP?MS)にて定量した結果、加齢にしたがって元素の量が漸減することがわかりました(図参照)。

 とくに、これらの変化は50歳代を境として見られることから食生活や生体内外の様々なストレスなどの関与が考えられます。たとえば、中年期から高齢期にかけて肉から魚を主体とした食生活に大きく変化することや、経済・生活問題などのストレスおよびホルモンの変化などが関係しているのかも知れません。

 また、男性の方が女性よりも元素変動が大きい傾向にあったことは、女性の方が酸化ストレスに対する抵抗性や免疫力が高いことと関係するかもしれません。

 さらに、被験者の自覚症状との関係から、「めまいがする」、「手足がしびれる」、「舌がもつれる」、「胸がしめつけられる」、「頭痛がする」、「動悸がする」、「眠れない」などと言った症状を持っている人は、血液中のCu、Se、Zn、Mn量が有意に(P<0.01)減少しているという結果を得ました。

 いずれにしてもミネラルの減少を補うためには摂取量を増やすことですが、過剰摂取すると逆に多くの機能に障害を与えますので、他の栄養素とのバランスも考えて上手に摂取することが大切です。【近藤雅雄】




出典 : Kondo M, Aiba N, Higashi E, Oka J,Kajimoto M : Changes due to ageing in the concentrations of trace elements in the whole blood that assist with the process of antioxidation. Biomed Res Trace Elements 15 : 342?344, 2004

ニュースレター「健康・栄養ニュース」第3巻4号(通巻11号)平成17年3月15日発行から転載