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栄養素の新規生理機能の検索:ビタミンD

 私たちは、栄養素の機能について研究しています。今回は私たちが行っている脂溶性ビタミンの一種であるビタミンDの新規生理機能の解析について紹介します。

 体内のビタミンDは皮膚における紫外線照射、あるいは食事に含まれる前駆物質を出発原料とします。これらの前駆物質は、様々な過程を経て最終的に肝臓と腎臓で水酸化されて、活性型ビタミンD(以下VDとします)になります。

 VDは標的となる細胞にたどりつくと、細胞膜を通過して、細胞内にある核内VD受容体(核内VDR)に結合します。このVD?核内VDR複合体は細胞核にある染色体(ゲノム)DNAの特定の場所に結合して、遺伝子発現を調節します。これはVDの“ゲノミック”作用と呼ばれています。VDの生理作用に関する研究は膨大で、その多くがゲノミック作用で説明できることに異論の余地はありません。

 しかし一方で、VDには“ノン(non-)ゲノミック”作用も知られています。これは文字どおり遺伝子発現を介さない作用をさします。VDが標的となる細胞膜上の受容体(膜VDR)に結合して、細胞内の複数のリン酸化酵素タンパク質を活性化させるため、細胞内情報伝達が迅速で、VD作用が比較的早くみられることが特徴です(図1)。

 実験的には、培養細胞を使った場合VDを添加して数秒から数分で効果が現れます。ゲノミックな作用発現にはタンパク質合成を必要としますから、同様な実験系を使っても少なくても数時間程度必要です。この現象は古くから知られていましたが、膜VDRの正体が不明なためノンゲノミックなVD作用メカニズムは未だ明らかにされていません。

 そこで私たちは、分子生物学の手法を使ってこの膜VDRを同定しようと試みています。詳細は省きますが、VDに応答してある種のリン酸化酵素タンパク質を活性化させる細胞株を得ています1)(図2)。詳しく解析することで、膜VDRの正体を明らかにする事が出来るのではないかと考えています。

 さて、膜VDRを介したノンゲノミック作用は何のためにあるのでしょうか。前に述べたようにVDの生理作用はゲノミック作用でその多くが説明できますが、私たちはゲノミック作用とノンゲノミック作用は協同して働いているのではないかと考えています。

 VDの生理作用で最も重要なのが小腸からのカルシウム吸収促進作用ですのでこれを例に挙げます。カルシウムは小腸で吸収されますがVDのゲノミック作用によって、細胞内にカルシウムを導入するカルシウムチャンネル、細胞内カルシウム輸送をつかさどるカルシウム結合タンパク質などの遺伝子発現が増大することで吸収量が増えると考えられています。

 しかし実際にはこれらの遺伝子発現よりも先にカルシウム吸収が起こり始めるという現象も知られています。私たちはVD添加後早い時期にはノンゲノミック作用、後になってゲノミック作用が追いかけてくることでカルシウム吸収が促進されているのではないかと考えています(図1)。

 これはあくまでも仮説ですので、証明するには先ず膜VDRの性状を明らかにする必要があります。

 最近、膜VDRは、実は核内VDRと同じ分子ではないかとの報告がなされました。VDのゲノミック-ノンゲノミックの関係は謎が深まりそうです。【山内 淳】






1) Yamauchi, J. The establishment of a HeLa cell demonstrating rapid mitogen activated protein kinase phosphorylation in response to 1α, 25-dihydroxyvitamin D3 by stable transfection of chick skeletal muscle cDNA library. Biosci. Biotechnol. Biochem., in press.

ニュースレター「健康・栄養ニュース」第4巻3号(通巻14号)平成17年12月15日発行から転載
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作成:2005/12/15 15:08:48 自動登録   更新:2008/7/4 15:19:47 自動登録   閲覧数:4517
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