特定健診・保健指導に向けて

―国立健康・栄養研究所の取り組み―


 みなさんは、平成20年4 月から「特定健診・保健指導」と呼ばれる新しい健康診査や保健指導が始まることをご存じでしょうか。

 これまで、住民健診などと呼ばれてきた基本健康診査は、老人保健法という法律にもとづいて、市町村がその地区に住む住民に対して実施することになっていました。

 新しい制度では、市町村ではなくそれぞれの個人が加入している医療保険の保険者(国民健康保険や健康保険組合、共済組合など)が、40歳?74歳の加入者(被保険者と被扶養者)に対して特定健康診査と特定保健指導を実施する責任を負うこととなりました。

 例えばサラリーマンの夫の扶養家族として医療保険に入っている人は、これまで市町村から基本健診のお知らせが来て健診を受診していたと思いますが、4 月以降は夫の会社の健康保険組合等から健診のお知らせが来ることになります。健診の内容も、生活習慣病をより効果的に予防する目的で、メタボリックシンドロームの予防と早期発見に重点を置いたものに変わり、メタボリックシンドロームやその予備軍と判定された人には、それぞれのリスクの程度別にきっちりと保健指導を行うという仕組みが出来上がりました。


 国立健康・栄養研究所では、この新しい健診・保健指導制度が作られる過程で、厚生労働省の様々な検討会に研究者が委員として参加して討議を重ねてきました。また、健診・保健指導に活用することを考慮した教材等を作成して、その有効性についても試行調査を実施し、一部の成果については、厚生労働省が公表した標準的な健診・保健指導プログラム(確定版)および保健指導事例集に掲載されています。

 保健指導の中で、基本指針として使われていく、「食事バランスガイド」や「健康づくりのための運動基準2006」、「健康づくりのための運動指針2006」の策定にも大きく貢献してきました。

 その他にも、下に示すような特定健診・保健指導のための教材等を開発し発表しています。今後は、この新しい制度がどの程度効果を発揮するのかの検証にも取り組み、よりよい制度となるよう研究を続ける予定です。


 4 月からは後期高齢者の新しい医療保険も同時にスタートし、医療保険制度全体が大きく変化します。みなさんも、市町村や保険組合からなどのお知らせをしっかりチェックして、新しい制度の中で健康増進・疾病予防に取り組んでください。【森田明美】



ニュースレター「健康・栄養ニュース」第6巻4号(通巻23号)平成20年3月15日発行から転載