魚介類の新たな魅力

?タウリンが不足すると肥満が加速されて悪循環を引き起こす?


■関連リンク(こちらもご参考にどうぞ)■
○魚介類の栄養
○食品中のタウリン含量


 魚介類を積極的に食べることは、肉類中心の食事よりも体に良いと考えられています。実際、魚介類にふくまれる様々な栄養素の研究からいくつかのエビデンスが得られています。タウリンもカキやイカなどの魚介類に多く含まれているアミノ酸の一種です。体の中では、心臓や肝臓の働きを強めたり、血中コレステロールを下げる等の作用があります。しかし、太りすぎや糖尿病にタウリンが効くのかはハッキリわかっていませんでした。

 タウリンは食事として摂取する以外にも体の中で作られています。肝臓にあるシステインジオキシゲナーゼ(CDO)がタウリン合成を調節しているのです。ところが、私達の研究から肝臓だけではなく脂肪細胞でもタウリンが作られている事がわかりました。

 さらにこの脂肪細胞でのタウリン合成は油の多い食事(高脂肪食)を食べて肥満になったマウスで減少していたのです。血中のタウリン量も減っていて肥満状態ではタウリンが不足している可能性が出てきました。

 そこで、高脂肪食の中にタウリンを加えてみると、体脂肪が増えなくなり肥満を発症しないことを突き止めたのです(図1)。

 タウリンを食べたマウスでは基礎代謝が増加していて、脂肪組織での脂肪の分解にかかわる遺伝子発現が増加していました。タウリンには脂肪の燃焼作用があるのかもしれません。おそらく、脂肪細胞に脂肪が溜まりすぎるとタウリンの合成が低下してタウリン不足の状態になってしまい、タウリンが持つ脂肪燃焼作用が発揮できず、肥満がさらに加速するという悪循環が生じてしまうのではないでしょうか(図2)。

 食事にタウリンを加える事は、肥満によって弱ってしまったタウリンの働きを補うことが出来たのかもしれません。

 最近の研究から、脂肪細胞は単に脂肪を蓄えるだけでなく、肥満や糖尿病の発症にかかわるホルモン様の物質(アディポサイトカイン)を分泌する場所として注目されています。タウリンも新規のアディポサイトカインとして肥満や糖尿病の発症に関わっている可能性が考えられます。一栄養素がこのようなかたちで体の機能を調節しているのはとても面白い現象です。

 しかし、これは大量のタウリンをマウスに食べさせた結果です(50?の人に換算すると約150gのタウリン)。今後は、人間の肥満にもタウリンが有効であるか明らかにしなければなりません。【笠岡(坪山)宜代】





出典:Tsuboyama-Kasaoka N, Shozawa C, Sano K, Kamei Y, Kasaoka S, Hosokawa Y, Ezaki O: Taurine deficiency creates a vicious circle promoting obesity. Endocrinology. [Epub ahead of print], 2006 April.

ニュースレター「健康・栄養ニュース」第5巻1号(通巻16号)平成18年6月15日発行から転載


■関連リンク(こちらもご参考にどうぞ)■
○魚介類の栄養
○食品中のタウリン含量