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日本人の妊婦における食事からの葉酸摂取量と血中葉酸濃度の検討
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 葉酸は水溶性ビタミンであるビタミンB群の一種で、細胞増殖に関与するDNAの合成に関わっています。

 近年の研究により、葉酸は神経管閉鎖障害が起きる危険性を低減させることがわかってきました。神経管閉鎖障害とは赤ちゃんの脳や脊髄などの神経管に起きる先天異常です。胎児の神経管が作られるのは妊娠初期の頃なので、受胎前後に充分に葉酸を摂取することが大切です。

 葉酸はその名のとおり葉ものの野菜や果物、豆類、レバーなどに多く含まれていますが、食事由来の葉酸は体内での利用効率があまり高くありません。また各個人の食生活によっては食事からだけでは充分に葉酸を摂取することが難しい場合もあります。

 そこで厚生労働省では妊娠を希望する全ての女性に通常の食事からの葉酸摂取に加えて、栄養補助食品などから一日400μgの葉酸を摂取することをすすめています。

 食事からの葉酸摂取量と血中の葉酸濃度については欧米を中心に研究が進んでいますが、日本人を対象としたデーターは充分ではありません。そこで本研究では特に葉酸栄養が重要な妊娠初期の日本人女性を対象として、葉酸摂取量と血中葉酸濃度について検討を行いました。

 対象者は健康な妊娠初期の女性70名です。3日間の食事記録をつけてもらい、一日の平均栄養素及び食品摂取量を算出しました。また同時期に採血を行い、血清葉酸及び赤血球中の葉酸濃度について測定を行いました。

 その結果、対象者の食事からの一日の平均葉酸摂取量は289μgで、日本人の食事摂取基準2005年版の妊婦の推奨量(440μg)を下回っていました。一方血中葉酸濃度については諸外国の報告で示された値を大きく上回っていました。

 さらに対象者を血清葉酸が9ng/mL未満の群と9ng/mL以上の群で分けて栄養素(摂取エネルギーで調整)及び食品摂取量を比較した結果、9ng/mL以上の群では9ng/mL未満の群よりもカルシウム、食物繊維、ほうれん草、果物などの摂取量が多いことが示されました。また、血清葉酸濃度はその他の血中栄養指標(ビタミンB2、アルブミン、ヘマトクリット)とも有意な正相関を示しました。

 葉酸は調理法や食品の種類によっても生体利用性が異なることが報告されており、日本人独自の食事形態の中に血中葉酸を高く保つ因子が存在する可能性が示唆されました。

 葉酸が不足すると神経管閉鎖障害だけでなく、動脈硬化や心臓病などの危険性も高まることが報告されています。妊婦だけでなく、その他の年代の日本人においても葉酸栄養状態のさらなる検討が必要であると考えられます。

 なお、本研究は厚生労働科学研究費補助金(主任研究者:吉池信男)により行われました。【三戸夏子、梅垣敬三、吉池信男】





出典:Mito N, Takimoto H, Umegaki K, Ishiwaki A, Kusama K, Fukuoka H, Ohta S, Abe S, Yamawaki M, Ishida H, Yoshiike N. “Folate intakes and folate biomarker profiles of pregnant Japanese women in the first trimester” European Journal of Clinical Nutrition( in press), 2006.

ニュースレター「健康・栄養ニュース」第5巻3号(通巻18号)平成18年12月15日発行から転載


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作成:2008/6/19 10:28:06 自動登録   更新:2009/1/27 10:16:27 自動登録   閲覧数:18992
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