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体重と総死亡率及び冠動脈疾患における心臓病症状との関連性: コホート研究のシステマティックレビュー

【細井俊克、廣田晃一 情報センターIT支援プロジェクト】

 体格指数(BMI)に関する分析論文がランセットの368号に掲載されました。タイトルは「体重と総死亡率及び冠動脈症例における心血管症状との関連性: コホート研究のシステマティックレビュー」であり、著者はメイヨ・クリニックのアベル・ロメロ-コーラル博士ら。本論文では40件の研究を対象に、主に疾病の発症との関連性においてBMIの解釈可能性を検討しています。



 BMIに関連してはこれまで多くの研究結果が発表されていますが、冠動脈疾患患者における肥満と総死亡率、心血管症状との関連性という点については、かならずしも意見の一致を見ていませんでした。そこで、本研究においては、これらのコホート研究についての統合的な分析から、疾病とBMIの関連性が検討されました。

 本研究では概算リスクと総死亡率が計算されている、体重もしくは肥満指標に基づいた、少なくとも六ヶ月の追跡調査のあるコホート研究が対象になりました。ここでは、BMIは以下の五段階に分類されました:低体重群(BMI 20未満)・標準体重群(基準グループ・BMI 20.0-24.9)・過体重群(BMI 25.0-29.9)・肥満群(BMI 30.0-34.9)・極度肥満群(BMI 35以上)。これらBMIと総死亡率、冠動脈バイパス手術経験者群(CABG)、冠動脈ステント手術経験者群(PCI)、心筋梗塞既往歴有りの群(MI)4つについての相関性が検討されたわけです。

 対象論文の選定にあたっては、OVID/Medlineデータベース上にある、1966年から2005年12月まで総計1,560件の体重もしくは肥満指標に基づいた研究の関連アブストラクトから186件をレビューし、概算リスクと総死亡率が計算されており、少なくとも六ヶ月の追跡調査のあるコホート研究(平均研究期間3.8年)40件の研究のべ250,152人の対象者を母集団に最終的な分析を行っています。

 その結果、それぞれ総死亡率及び心血管関連疾患による死亡率を比較してみると、標準体重群(BMI 20.0-24.9)を1.0としたときの相対的リスクで検討したところ、「低BMI」群の患者の総死亡率は1.37倍で心血管イベントによる死亡率は1.45倍。双方において相対リスクが増加しており、逆に「過体重」群の総死亡率は0.87倍で心血管イベントによる死亡率は0.88倍。共に5群中最低であったということです。

 同様に、「肥満」群の総死亡率は0.93倍、心血管イベント関連で0.97倍。

 「極度に肥満」群の総死亡率は1.10倍と、さほどの増加はみられなかったのですが、心血管イベントによる死亡率では1.88倍と最も高率の相対リスクになりました。

 以上を簡単にまとめると、低BMI群における死亡率上昇、過体重群における死亡率低下、ということになります。比較的高い死亡率がCABGの「肥満」群に見られたものの、PCIとMIを含めた心疾患患者全体を考慮に入れると、「極度に肥満」群でも死亡リスクの増加は見られませんでした。

 これらの結果の解釈について、著者らは、余剰脂肪が冠動脈疾患症候のリスクファクターではないと早計に総括する前に注意して理解する必要があると指摘しています。つまり、肥満あるいは過体重の状態でいる方が良好な生存率をもたらしたことについては、以前からいわれているような「肥満逆説」と同様なのですが、著者らは、BMI指標の限界を露呈するものであり、体脂肪率と除脂肪体重を区分することができないという点に原因を集約できそうだと考察しています。

 例えば、低BMIは筋萎縮症においては顕著に表れる現象であって、このことは死亡率の上昇に関わる可能性があります。また同様に低BMIは心血管疾患の危険因子としては十分に確立されているとはいえない前提があるために、効果的な二次的疾病予防手段(たとえば、健康的な食事、運動プログラムへの参加、コレステロールの低下に気を配るといったような)の射程外にあるのではないか、ということはありそうなことです。

 さらに、やや高めのBMIは、除脂肪体重の上昇によってもたらされることもあるため、結果的に死亡率低下に寄与することは普通にありそうです。逆に言えば、BMI指標は、脂肪過多を適切にとらえ切れていないのではないか、ということです。

 またメタアナリシス(メタ分析)を行ううえで不十分だった点としては、個別の生データ収集を行うことができなかった点、また1980年代から90年代の肥満に対する多くの論点の存在から発生した出版バイアスの存在などを著者らが指摘していることを付け加えておきます。

 以上の解釈にもあるように、BMI指標を単純に死亡率と結びつけて考えることは、意外と厳密な検討が難しいものであるかも知れないといえるでしょう。体重が重くても体組成的には体脂肪率が少ないという例でもBMIが上昇してしまったりすることもあるからです。

 現実には、「極度に肥満」である場合には有意に心血管イベント関連死亡率が上昇していることからも、冠動脈疾患の危険因子としてのBMIによる「肥満」の位置づけは高いとも考えられます。できることなら、体脂肪率や除脂肪体重に気を払った正確な体組成を検討することが本当は重要なのであって、単純に「太っていた(体重が重い)方が死亡率が低い」と、(この結果から)言いきることはできないと考えるのが妥当といえるでしょう。

文献
Romero-Corral, A, Montori, VM, Somers, VK, Korinek, J, Thomas, RJ, Allison, TG, Mookadamm F and Lopez-Jimenez, F. Association of bodyweight with total mortality and with cardiovascular events in coronary artery disease: a systematic review of cohort studies. The Lancet 2006; 368:666-678 DOI:10.1016/S0140-6736(06)69251-9 [Abstract]
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作成:2006/10/12 16:29:53 root   更新:2008/6/9 11:01:48 root   閲覧数:7667
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