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国際災害栄養研究室
Section of Global Disaster Nutrition
東日本大震災における栄養士から見た「食べる」問題
災害時の「食べる」に関連する問題を明らかにするため,東日本大震災後に日本栄養士会から被災地へ派遣された災害支援管理栄養士などの活動報告書をもとに、どのような問題がおこっていたのかを調べました。
研究方法 活動報告書内の口腔に関するキーワードを検索し、抽出されたテキストをKJ法により分類し、分析しました。
結果
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被災地での「食べる」問題は,次のように4つに分類されました。
1. 飲み込めない」問題
「嚥下が困難で流動食、とろみ剤等食事形態の工夫が必要」「むせでとろみ剤等が必要」「誤嚥」が含まれ、軟らかい飲み込みやすい食事が要望されていました。
2.「噛めない」問題
「咀嚼力が弱く、きざみ食等が必要」「義歯の流失・不具合により食事量が減少」等が含まれていました。
3.「環境の悪化」問題
「菓子の多食・齲蝕・肥満等の増加」「歯磨き等ができない」が含まれ、避難所での食事状況も口腔内の環境に影響している可能性が示されました。
4.「口腔状況の悪化」問題
「口内炎の発生」、その他に 「痰がからむ、口腔内乾燥」が含まれました。
この研究から考えられること 災害時、食べることを支えるためには、口の中の環境を整備する体制が必要であることが示されました。今後、支援栄養士だけではなく,被災者の健康支援に関わる専門職は,歯や口の中の健康(口腔保健)の重要性や歯科分野との連携を意識する必要があることが明らかとなりました。
本研究の論文
笠岡(坪山)宜代、近藤明子、原田萌香、上田咲子、須藤紀子、金谷泰宏、下浦佳之、中久木康一. 東日本大震災における栄養士から見た口腔保健問題. 日摂食嚥下リハ会誌. 2017;21(3):191-199.