研究室について

KAGAMIプロジェクト

D-アミノ酸を臨床へ

KAGAMIプロジェクトは2017年7月に発足しました。アミノ酸には D-体と L-体という鏡像異性体(キラル体) が存在します。自然界のアミノ酸は、L-体しか存在しないと長い間考えられていましたが、最近、D-体もごく微量存在することが判明しました。生命現象の起源の謎にも関連しています。

我々は、D-アミノ酸が腎臓病のバイオマーカーであることを示してきました。この発見は、これまで不十分であった腎臓病の早期診断、予後予測を充実させることで、日本人の一千万人、世界の8.5億人が罹患している腎臓病の根本的な課題解決に有用です。キラルアミノ酸の正確な測定技術を臨床を意識したリバトラ視点と組み合わせることで、社会実装化を強く意識して研究を進めています。

最近の研究では、これまで正確な評価が難しかった、腎臓の機能を簡便かつ精密に評価する手法を開発しました。生体にほとんど存在しないD-アミノ酸の新たな生理機能も解明しつつあり、これを利用した治療法開発も進めています。

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リバーストランスレーショナル研究プロジェクト

リバーストランスレーショナル(リバトラ)研究プロジェクトでは、臨床の疑問を重視し、基礎研究主題に置き換え解決するリバトラを実践しています。センター内やKAGAMIプロジェクト、難病研究班などとの連携の下、難治性疾患の創薬基盤研究や難病データの解析を進めています。

難病の複雑な病態の解明においては、一般的とされるアプローチでは跳ね返されます。ガリレオは、「懐疑は発明の父である」と述べましたが、リバトラは、科学、医学的に常識とされがちなことを疑うことから研究を始めます。常に常識とされていることを疑うことで、画期的な難病モデル動物の作成が進んでいます。さらにD-アミノ酸やtRNA測定技術などを組み合わせることで、難病の病態解明が進められています。最先端の技術を活用するのは重要ですが、研究手法はあくまで研究者の道具と捉えています。

また、難治性疾患の情報解析も行っています。難治性疾患研究を難しくしている理由の一つに、患者数が少いことから、難治性疾患に関する十分な情報が無いことが挙げられます。本研究では、難治性疾患の研究基盤として、必要な情報を整理し解析することで、広く難病研究者がリバトラをするのに欠かせない情報の提供を行っていきます。

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最近では、パンデミックを起こしたCOVID-19を含めた重症ウイルス感染症の課題解決にも研究手法を活用しています。D-アミノ酸はウイルス感染症の重症化を予測するバイオマーカーであり、さらには、モデルマウスにおいてD-アミノ酸自体の治療効果も示されました。リバトラ的に社会問題の解決にも大胆に取り組んでいます。

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難病研究開発に向けて

難病の複雑な病態解明には、既存の研究手法のみならず最先端の技術導入、難病情報の収集と解析などを総動員する必要があります。常にリバーストランスレーショナル研究(臨床問題の解決志向型の研究)の視点を重視し、難治性疾患の臨床上の問題解決に向けた研究を行っています。

難治性疾患研究開発・支援センター