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各部案内

代謝疾患関連タンパク探索プロジェクト

1.メンバー

○プロジェクトリーダー 竹森 洋 >>Mail
○特任研究員 佐野坂 真人・熊谷 彩子
○協力研究員 川村 知裕(大阪大学・呼吸器外科)
○研究補助員 伊東 裕美・森田 純子・賀川 舞
○客員研究員 土居 純子(千里金蘭大学・食物栄養学科)
○研修生 大西 智子・藤川 和平・田村 淑恵・東 千菜美
○研修生 吉本 幸広・玉野 真子・米山 千裟・平田 弥久

2.研究目的・背景

糖・脂質の代謝異常は様々な疾患の原因であるのみならず、多くの疾患の増悪化に関与します。当プロジェクトでは、糖・脂質代謝調節シグナルを解明して、炎症性疾患や神経変性疾患などの治療に役立つ標的タンパク質の探索を行っております。また、創薬標的候補を制御するための低分子化合物を探索し、新たな創薬戦略を提案します。

3.研究内容

生体エネルギーの分配・貯蔵が機能しないと、本来我々が備えている生体調節維持機構を保つことができなくなります。それに伴い、過剰な炎症反応の誘導や酸化・還元ストレスに対する抵抗性の低下が起こります。これらの病態に特異的なタンパク質を同定し、そのタンパク質の遺伝子破壊モデル動物を利用することで、疾患の発症機構や増悪化の機構を解明しています。また、ヒト疾患との相同性の検索を行うことで、治療法・治療薬・創薬マーカーの探索を行っております。

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1) 外部シグナルに反応して遺伝子発現をダイナミックに調節するタンパク質リン酸化酵素 SIK

当プロジェクトの研究テーマの1つは塩誘導性キナーゼ(SIK)です。SIKはホルモン、栄養、炎症シグナルにより誘導されるストレス応答因子の1つです。SIKには1−3の3つのアイソフォームがあり、それらはcAMPシグナルで調節されている転写因子CREBとMEF2の機能を調節しています。CREBに対しては抑制的に機能し、MEF2に対しては活性化に働きます。これは、CREBの転写機能に不可欠な共役因子CRTCとMEF2を普段抑制しているクラス2ーヒストンデアチレース(HDAC II)の双方の機能を抑制するためです。SIKの遺伝子破壊マウスが様々な病態を示すことから、SIKが関与する生体調節シグナルの重要性がうかがわれます。

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 CRTCとHDAC IIは細胞質と核を行き来することで遺伝子発現調節を行っております。cAMPシグナルは CRTCとHDAC IIの両方の核内移行を促進し、SIKは細胞質移行を促進します。Ca2+シグナルはCRTCとHDAC IIを逆に制御することで多様な遺伝子発現調節を行っております。PGC-1aという転写因子は、細胞が酸素を利用してエネルギーを獲得する際に重要なミトコンドア機能を亢進させる働きがあります。PGC-1aの遺伝子発現領域にはCREBとMEF2の両方が作用する部位が存在するため、SIKによるPGC-1a遺伝子発現調節の方向性は臓器や細胞ごとで逆になることもあります。PGC-1aの機能不全マウスが神経変性を誘発することから、SIKの制御剤の開発を通じて神経に有用な薬の開発を行っております。

2) 酸化ストレスに対する創薬研究

SIK2は脂肪細胞で高発現しています。そのため、肥満に関係するのではという予想のもと遺伝子破壊マウスを作成しました。しかし、体重の変動は必ずしも大きくはありませんでした。一方、SIK2-KOマウスから培養細胞を調整する際に、SIK2-KO由来の細胞が野生型に比べて高収量であることに気づきました。培養細胞は酸化ストレスに弱いため、SIK2が酸化ストレスに関係すると予想しました。特に神経における役割は顕著で、脳梗塞モデルにおいてSIK2が無いと細胞生存に作用することが分かりました。Ca2+シグナルはSIK2を分解する経路へ導きます。この当時は、CRTCをTORCとも呼んでいました。

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神経ではCa2+シグナルがSIK2を抑制することでCRTCを長時間核内へ止め、神経保護作用に機能するPGC-1aやBDNF(神経栄養因子)の誘導が起こります。一方で、SIK2-KOマスウは毛色が違うことも分かりました。野生型マウスの毛色は茶色です。白人のようにメラニンの合成が少ないヒトは毛色が黄色になりますが、マウスでも同様な黄色マウスがいます。その黄色マスウでSIK2が機能しないと、毛色は野生型の茶色に戻ります。この毛色変化を利用して、薬の候補が体内で作用するか否かを調べております。既にいくつかの低分子化合物が低濃度で作用することを見出し、神経変性疾患への応用を検討中です。

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3) 低分子スクリーニング系の改良

薬の元となる低分子化合物をスクリーニングする際に最も難しいことは擬陽性の排除です。我々は、試験管内での酵素反応のみならず、シグナル伝達を補足するシステムの開発を行っております。1つにシグナルに対して相反する2つの方向を組み合わせることで、システムに対する擬陽性率の低減に成功しました。複数の酵素と異なる基質の組み合わせでも目的外の擬陽性を下げることに成功しました。

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CRTCはSIKでリン酸化されると14-3-3とうタンパク質が結合することで機能が失われます。しかし、14-3-3に強力な転写活性化因子VP16を結合しておくと、失活状態のCRTCが強力な転写活性を示します。一方、CRTCの機能消失に関わるリン酸化部位は複数存在し(最近の論文6)、14-3-3結合領域を破壊しても別の機構でリン酸化依存的転写抑制が観察されます。野生型のCRTCをホタルのルシフェラーゼで、14-3-3非結合型のCRTCをウミシイタケのルシフェラーゼで評価することで、SIKがCRTCに同様に機能しても、片方が活性化で片方が抑制されるシステムを構築しました。このほか、複数のタンパクリン酸化酵素や転写因子に対する評価系を構築しております。スクリーニングしてみたい因子がございましたらご相談ください。転写因子以外にも各種プロテアーゼを活性化/抑制化比率で同様に評価する方法を構築しました。低分子化合物としては3000-10000程度を用意してあります。

最近の論文
1) Involvement of SIK3 in glucose and lipid homeostasis in mice.
Uebi T, Itoh Y, Hatano O, Kumagai A, Sanosaka M, Sasaki T, Sasagawa S, Doi J, Tatsumi K, Mitamura K, Morii E, Aozasa K, Kawamura T, Okumura M, Nakae J, Takikawa H, Fukusato T, Koura M, Nish M, Hamsten A, Silveira A, Bertorello AM, Kitagawa K, Nagaoka Y, Kawahara H, Tomonaga T, Naka T, Ikegawa S, Tsumaki N, Matsuda J, Takemori H.PLoS One. 2012;7(5):e37803.

2) SIK3 is essential for chondrocyte hypertrophy during skeletal development in mice.
Sasagawa S, Takemori H, Uebi T, Ikegami D, Hiramatsu K, Ikegawa S, Yoshikawa H, Tsumaki N.Development. 2012 Mar;139(6):1153-63

3) A potent inhibitor of SIK2, 3, 3', 7-trihydroxy-4'-methoxyflavon (4'-O-methylfisetin), promotes melanogenesis in B16F10 melanoma cells.
Kumagai A, Horike N, Satoh Y, Uebi T, Sasaki T, Itoh Y, Hirata Y, Uchio-Yamada K, Kitagawa K, Uesato S, Kawahara H, Takemori H, Nagaoka Y.PLoS One. 2011;6(10):e26148.

4) SIK2 is a key regulator for neuronal survival after ischemia via TORC1-CREB.
Sasaki T, Takemori H, Yagita Y, Terasaki Y, Uebi T, Horike N, Takagi H, Susumu T, Teraoka H, Kusano K, Hatano O, Oyama N, Sugiyama Y, Sakoda S, Kitagawa K.Neuron. 2011 Jan 13;69(1):106-19

5) Downregulation of SIK2 expression promotes the melanogenic program in mice.
Horike N, Kumagai A, Shimono Y, Onishi T, Itoh Y, Sasaki T, Kitagawa K, Hatano O, Takagi H, Susumu T, Teraoka H, Kusano K, Nagaoka Y, Kawahara H, Takemori H.Pigment Cell Melanoma Res. 2010 Dec;23(6):809-19

6) Phosphorylation of the CREB-specific coactivator TORC2 at Ser(307) regulates its intracellular localization in COS-7 cells and in the mouse liver.
Uebi T, Tamura M, Horike N, Hashimoto YK, Takemori H.Am J Physiol Endocrinol Metab. 2010 Sep;299(3):E413-25

7) Involvement of SIK2/TORC2 signaling cascade in the regulation of insulin-induced PGC-1alpha and UCP-1 gene expression in brown adipocytes.
Muraoka M, Fukushima A, Viengchareun S, Lombès M, Kishi F, Miyauchi A, Kanematsu M, Doi J, Kajimura J, Nakai R, Uebi T, Okamoto M, Takemori H.Am J Physiol Endocrinol Metab. 2009 Jun;296(6):E1430-9

8) Inactivation of HDAC5 by SIK1 in AICAR-treated C2C12 myoblasts.
Takemori H, Katoh Hashimoto Y, Nakae J, Olson EN, Okamoto M.Endocr J. 2009;56(1):121-30

9) Importance of autophosphorylation at Ser186 in the A-loop of salt inducible kinase 1 for its sustained kinase activity.
Hashimoto YK, Satoh T, Okamoto M, Takemori H.J Cell Biochem. 2008 Aug 1;104(5):1724-39

10) SIK1 is part of a cell sodium-sensing network that regulates active sodium transport through a calcium-dependent process.
Sjöström M, Stenström K, Eneling K, Zwiller J, Katz AI, Takemori H, Bertorello AM.Proc Natl Acad Sci U S A. 2007 Oct 23;104(43):16922-

共同研究および大学院生募集
有用な低分子候補を探しておられる研究者、企業の方はご連絡ください。3-6ヶ月で初期評価を行います。
その他、マウスはこちらはご覧ください。
SIK2:SIK2-KO
SIK3:SIK3-KO
TS3(脊髄小脳変成症): TS3
TS10神経変性疾患・拒食症モデル):準備中

連絡先:
独立行政法人 医薬基盤研究所
代謝疾患関連タンパク探索プロジェクト
567-0085大阪府茨木市彩都あさぎ7−6−8
TEL 072−641−9834、 FAX 072−641−9826

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