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お知らせ

「白血病病因因子Nup98融合タンパク質の分子機能の解明」に係る論文掲載について

2016年1月12日

 国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所、細胞核輸送ダイナミクスプロジェクト岡正啓プロジェクトリーダー(大阪大学大学院薬学研究科招聘准教授兼務)、米田悦啓理事長(医薬基盤研究所研究所長、大阪大学大学院薬学研究科招聘教授兼務)らは、九州大学医学研究院 大川恭行准教授、東京工業大学生命理工研究科 木村宏教授らと共に、白血病病因因子Nup98融合タンパク質の分子機能を解明しました。研究成果が英国科学誌eLifeに掲載されましたので、お知らせいたします。この研究はNup98融合タンパク質を発現する白血病の病態メカニズムの解明や治療薬の開発へ繋がる成果であると期待されます。
 本研究は、文部科学省科学研究費補助金・新学術領域研究「動的クロマチン構造と機能」(領域代表者:早稲田大学 胡桃坂仁志)、および、独立行政法人日本学術振興会(JSPS)科研費補助金の支援を受けて行われました。

【論文タイトル】:「Chromatin-prebound Crm1 recruits Nup98-HoxA9 fusion to induce aberrant expression of Hox cluster genes 」

【掲載誌】:「eLife」(2016;5:e09540)

【概要】:
 核と細胞質間の物質輸送の通過点として機能する核膜孔複合体は、ヌクレオポリンと呼ばれる約30種類のタンパク質で構成されています。ヌクレオポリンの一つであるNup98の遺伝子は白血病で染色体の転座により様々な遺伝子との融合遺伝子を形成し、その遺伝子産物であるNup98融合タンパク質の発現が白血病を引き起こす事が知られています。Nup98と転写因子HoxA9との融合タンパク質であるNup98-HoxA9は、核内で特徴的なドット構造を形成することが知られていましたが、その機能については、これまでよく分かっておりませんでした。
 我々はNup98-HoxA9をマウス胚性幹(ES)細胞で発現させると、細胞の分化制御に重要な役割を持つホメオボックス(Hox)遺伝子群の発現が非常に活性化されることを見出しました。また、Nup98-HoxA9がゲノム上でHox遺伝子クラスター領域に選択的に集積していることが分かり、Nup98-HoxA9の結合によって局所的な遺伝子発現の活性化が引き起こされていることが明らかになりました。さらに、核から細胞質へと物質を輸送する因子(核外輸送因子)であるCrm1 (Chromosome region maintenance 1; あるいはExportin1/Xpo1とも呼ばれる)があらかじめHox遺伝子クラスター領域に結合しており、Nup98-HoxA9をリクルートしていることが明らかになりました。Nup98-HoxA9を発現する白血病は予後が悪いことが知られております。今回、我々がNup98-HoxA9の分子機能を明らかにしたことで、新たな作用機序を持つ治療薬開発への道が開かれました。

【研究に関する問い合わせ先】
岡 正啓 (OKA Masahiro)
国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所
細胞核輸送ダイナミクスプロジェクトリーダー
〒567-0085
大阪府茨木市彩都あさぎ7-6-8
電話: 072-641-9012(内線2401)
E-mail: moka@nibiohn.go.jp

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