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お知らせ

【報道発表】「抗酸菌分泌タンパクAg85Bの新たな機能を発見~新規アジュバント候補物質として期待~」に係る論文掲載について

2014年9月 8日

 独立行政法人医薬基盤研究所 霊長類医科学研究センターの保富康宏センター長と辻村祐佑研究員は、新規アジュバント候補物質である抗酸菌分泌抗原Ag85Bの生物活性を評価するため、世界で初めて精製に成功した高純度タンパク体のAg85Bを用い、アレルギー性喘息に対する影響を検討しました。その結果、Ag85Bには、これまで報告されていた1型T helper(Th1)反応を誘導する作用だけではなく、組織の恒常性維持に関わる免疫担当細胞や液性因子を炎症局所に誘導することで、炎症の終息を早める効果があることを発見しました。その研究成果が米科学誌PLOS ONE電子版に掲載されましたのでお知らせいたします。
 なお本研究は、文部科学省及び厚生労働科学研究費補助金(研究事業)の成果です。

【原題】
Effects of mycobacteria major secretion protein, Ag85B, on allergic inflammation in the lung.

【邦題】
肺のアレルギー性炎症に対する抗酸菌分泌タンパク"Ag85B"の効果

【掲載誌】
PLOS ONE(2014年9月5日(日本時間:9月6日)オンライン公開)
http://dx.plos.org/10.1371/journal.pone.0106807

【概要】
 体内に存在する免疫担当細胞のうち、1型T helper(Th1)細胞は非自己と認識した細胞を拒絶する細胞性免疫に関与し、interferon (IFN)-γなどを産生することでマクロファージなどの他の免疫担当細胞を活性化する働きを持つ。Th1細胞が関与する免疫反応(Th1免疫反応)は、結核菌などの抗酸菌に感染した際、その除去に重要な役割を果たす。
 一方、抗酸菌分泌抗原Ag85Bは、このTh1細胞の増殖、および強力なTh1型免疫反応を誘導することが明らかとなっており、新規アジュバント(※1)候補物質として検討している。
 今回我々は、Ag85Bの高純度なリコンビナントタンパク(※2)(rAg85B)を精製し、代表的なアレルギー疾患である喘息のマウスモデルを用いてAg85Bの有する生物活性を検討した。その結果、rAg85Bを投与したマウスでは、これまでに報告されているようなTh1サイトカイン(※3)の産生増強が認められ、アレルギー性炎症・病態の抑制効果を示した。さらに興味深いことに、rAg85Bは炎症局所においてTh17サイトカイン(IL-17, IL-22)や細胞遊走因子の他、組織修復・恒常性維持に関わるいくつもの分子を誘導することを発見した。
 結核ワクチンとしての効果も報告されているAg85Bは、結核菌を含むあらゆる抗酸菌に保存されており、Ag85BによるTh1反応の誘導はBCG感作によって顕著に増強される。多くの人がBCG接種や抗酸菌の自然感染を受けていることを考えると、効果的にTh1反応を誘導する手段としてAg85Bを用いることは大変意義深い。自然界に存在する抗酸菌の分泌抗原をアジュバントとして開発できれば、  臨床効果の長期的持続なども期待できると考えられる。

※1)ワクチンと一緒に投与して、その効果(免疫原性)を増強する目的で使用される物質(因子)の総称。
※2)遺伝子組換えタンパク質。
※3)細胞から放出され、種々の細胞間での情報伝達分子となるタンパク質。

照会先: 独立行政法人 医薬基盤研究所
霊長類医科学研究センター  保富 康宏
TEL 029-837-2073

報道提供資料(PDF)

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