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お知らせ

「大腸がん発症・転移に関わる44種類の新規創薬標的分子の発見~次世代質量分析計を用いた大規模探索~」に係る論文掲載について

2014年4月 2日

 独立行政法人医薬基盤研究所 プロテオームリサーチプロジェクトの朝長 毅プロジェクトリーダーと久米秀明研究員は、次世代質量分析計を用いて大腸がんの創薬標的タンパク質の大規模探索を行い、大腸がん発症・転移に関わる44種類の新規創薬標的分子を発見いたしました。その研究成果が米科学誌Molecular Cellular Proteomics電子版に掲載されましたのでお知らせいたします。
 なお本研究は、文部科学省 次世代がん研究シーズ戦略的育成プログラム及び厚生労働科学研究費補助金(創薬基盤推進研究事業)疾患関連創薬バイオマーカー探索研究の成果です。

【原題】
Discovery of colorectal cancer biomarker candidates by membrane proteomic analysis and subsequent verification using selected reaction monitoring and tissue microarray analysis

【邦題】
selected reaction monitoring法及び組織アレイを用いた大腸がんのバイオマーカー膜タンパク質探索と検証

【掲載誌】
Molecular Cellular Proteomics(2014年3月31日オンライン公開)

【概要】
 現在、大腸がんの部位別死亡数は男性が第4位、女性は第1位であり、大腸がんの死亡者数は年々増加傾向にあります。近年、大腸内視鏡、超音波、CT等の診断技術の進歩により、発症や転移が比較的早期に発見されるケースも増えてきましたが、低侵襲、低コストで発症や転移を早期に診断する方法が求められています。また、分子標的薬等新薬の開発により予後の改善がみられますが、薬剤に対する耐性化が問題となっており、より多くの新薬の開発が望まれています。
 これまでも網羅的探索により、様々ながんに対する新規創薬標的分子の探索が行われ、多くの候補分子が見出されましたが、それを大規模に検証する術がなかったため、それらの多くは候補のままで終わっていました。今回我々は、次世代質量分析計を用いたselected reaction monitoring(SRM/MRM)法を使って、大腸がんの創薬標的候補分子の大規模な検証を行い、大腸がん発症・転移に関わる44種類の新規創薬標的分子を発見いたしました。
 我々は、診断薬や抗体医薬の標的となりやすい膜タンパク質に着目し、まず大腸がんの前がん状態のポリープ、転移のない比較的早期の大腸がん、転移のある進行大腸がんの組織6検体を用いてタンパク質の網羅的探索を行い、約200種類の創薬標的候補分子を同定しました。ついで、探索に用いた検体とは別の30検体を用いてそれらの候補分子上記のSRM/MRM法で検証を行った結果、44種類のタンパク質が新規創薬標的分子になりうることを確認しました。さらに、その44タンパク質の中で、機能未知のC8orf55というタンパク質について、約1000検体からなる組織アレイで検証を行ったところ、大腸がんだけでなく、胃がんや乳がんの創薬標的になりうることも見出しました。
 本研究成果は、今後増え続けることが予想される大腸がんの発症や転移を早期に発見する診断薬や、新しい治療薬の開発に貢献するものと期待しています。

照会先: 独立行政法人 医薬基盤研究所
プロテオームリサーチプロジェクト
朝長 毅
TEL 072-641-9862

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