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お知らせ

「次世代質量分析計を用いた血中超微量アルツハイマー病診断マーカー定量法の確立」に係る論文掲載について

2014年1月 6日

 独立行政法人医薬基盤研究所 プロテオームリサーチプロジェクトの朝長 毅プロジェクトリーダーと佐野聖三研究員及び大阪大学大学院医学系研究科 精神医学講座大河内正康講師らのグループは、次世代質量分析計を用いた血中超微量アルツハイマー病診断マーカーAPL1β定量法を確立いたしました。その研究成果が米科学誌Journal of Proteome Research電子版に掲載されましたのでお知らせいたします。
 なお本研究は、文部科学省脳科学研究戦略推進プログラムにより実施された「精神・神経疾患の克服を目指す脳科学研究」及び厚生労働科学研究費補助金(創薬基盤推進研究事業)疾患関連創薬バイオマーカー探索研究の成果です。

【原題】
Absolute quantitation of low abundance plasma APL1β peptides at sub fmol/mL level by SRM/MRM without immunoaffinity enrichment

【邦題】
SRM/MRM法を用いた血液中fmol/mL以下の超微量APL1βペプチドの絶対定量

【掲載誌】
Journal of Proteome Research(2013年12月27日オンライン公開)

【概要】
 アルツハイマー病は老化に関連して起こる代表的な神経変性疾患です。現在の日本人の平均寿命では、アルツハイマー病などの認知症を発症する割合は20%程度ですが、実際はその過半数の人の脳内でアルツハイマー型の病理過程が相当に進んでいると考えられています。また、現在の寿命が5歳延びると認知症を発症する人の割合は劇的に増え50%程度になると推定されています。従って、認知症の発症を予測し、早期に予防的措置をとる必要があります。
 アルツハイマー病は脳内にAβ42というペプチドが蓄積することが引き金になり発症すると考えられていますが、現在のところその蓄積に先立つ産生量の増加を測定する方法はありません(蓄積はアミロイドPETで見れます)。これまで、髄液中のAβ42量がアルツハイマー病の診断マーカーとして有用ではないかという研究がなされてきましたが、早期診断には限界があること分かってきていました。
 我々はこれまで、Aβ42と同じ仕組みで脳内で産生されるAPL1β28を発見し、その髄液中の量がアルツハイマー病の診断に有用であることを見出してきました(Yanagida et al., EMBO MM. 2009)。このAPL1β28の増減は脳内Aβ42の増減を正確に反映しており、Aβ42とは異なり、アルツハイマー病脳内での病理過程の進行を正確に測定できます。しかし、髄液検査は非常に侵襲性が高く、簡便にできる検査ではないため、非侵襲的かつ簡便に測定できる血液検査法の開発が必要となります。さらに、血液中のAPL1β28は非常に微量であり、これまで髄液検査で用いられてきたELISA法では血液中のAPL1β28は検出できませんでした。
 今回我々は、次世代質量分析計を用いて、血液中に超微量に存在するAPL1β28の検出・定量に成功しました。アルツハイマー病のような長期間にわたって潜行性に進行し、しかも発症率が特別に高い疾患では、血液を用いた検査で病気がどれほど発症に近づいているか調べることが出来れば早期診断・早期治療につながります。本研究成果は、今後増え続けるであろうアルツハイマー病の発症を予測し、早期に予防するための有効な手段になり得るものと期待しています。

照会先: 独立行政法人 医薬基盤研究所
プロテオームリサーチプロジェクト 朝長 毅
TEL 072-641-9862

<文部科学省 脳科学研究戦略推進プログラムに関するお問い合わせ>
脳科学研究戦略推進プログラム 事務局
担当:大塩
TEL:03-5282-5145/FAX:03-5282-5146
E-mail: srpbs@nips.ac.jp

プレスリリース(PDF)

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