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お知らせ

「癌関連蛋白質の新しい分子認識様式の解明」の論文がJBCのPapers of the Weekに選出されました!

2013年4月22日

 当研究所の共用機器実験室 赤木謙一副室長、大阪大学蛋白質研究所 蛋白質解析先端研究センター 先端計測研究室 池上貴久准教授、超分子構造解析学研究室 中川敦史教授、大阪大学微生物病研究所 発癌制御研究分野 岡田雅人教授らの研究グループは、癌関連蛋白質間における新規の分子認識様式について核磁気共鳴(NMR)法を用いて解明しました。この研究成果が米科学誌Journal of Biological Chemistry誌に掲載されましたのでお知らせします。また本研究成果は、JBC誌のトップ2%に与えられる"Papers of the Week"に選出されました。

【原題】
Identification of a new interaction mode between the Src homology 2 (SH2) domain of C-terminal Src kinase (Csk) and Csk-binding protein (Cbp)/phosphoprotein associated with glycosphingolipid microdomains (PAG)

【邦題】
Src蛋白質C末端リン酸化酵素 (Csk) のSH2ドメインとCsk結合蛋白質 (Cbp) の新規相互作用様式の解明

【掲載誌】
Journal of Biological Chemistry (2013年4月2日オンライン公開)

【概要】
 核磁気共鳴(NMR)法は、蛋白質を含む生体高分子の"形"を探求することの出来る手法の一つです。本研究において、癌を抑制する蛋白質CskのSrc homology 2 (SH2)ドメインとCsk結合蛋白質(Cbp)がどのような結合様式によって分子認識されているのかをNMR法を用いて解明しました。(ドメイン:独立の機能を有する構造単位)
 CskはSH2,SH3,キナーゼ活性の3つの機能ドメイン構造を持つ蛋白質です。SH2ドメインは多くのシグナル伝達蛋白質において共通に見られる構造であり、シグナル伝達を行う蛋白質のリン酸化チロシン残基(pTyr)を認識して結合します。Cskは癌原因蛋白質であるSrcファミリーチロシンキナーゼ(SFKs)のC末端部位にあるチロシンをリン酸化することによってシグナル伝達を制御しています。SFKsはN末端にアシル化脂肪酸を有しており、細胞膜につなぎ止められています。一方、Cskはそのようなアシル化脂肪酸部位がなく、細胞質に存在しています。そこで、CskがSFKsの近傍に存在するための機構が必要となります。その役割を演じているのが膜貫通型蛋白質のCbpです。 CskがCbpと結合することによりSFKsに接近し、SFKsのキナーゼ活性を抑制することによって、細胞増殖や分化などの生理機能制御を行っています(図1)。
 これまでに行われてきた多くの構造学的研究から、SH2ドメインはpTyrと、それに続くC末端側3アミノ酸残基(-pTyr-X1-X2-X3-)を認識して結合するという報告がなされてきました。本研究の結果から、Csk-SH2は、CbpのpTyr314を含む領域 (-pTyr314-Ser315-Ser316-Val317-)が関与した結合様式を有しているのみならず、pTyr314から約20アミノ酸残基N末端側に離れた場所のTyr296との結合が必須であることが明らかになりました。またCsk(SH2)-Cbp複合体構造についてNMR法を用いて解析した結果から、Tyr296とpTyr314は立体構造上非常に近い場所に存在し、複合体構造を安定化していることがわかりました(図2)。またCbpが結合することにより、Csk活性型構造に近い構造に変化していることが推察されました。
 本研究から、Csk-SH2とCbpとの結合様式が蛋白質立体構造の観点から判明したことにより、癌抑制機構の一端が解明されました。今後、本研究で得られた知見から癌を抑制する創薬研究に応用されることが期待されます。

 

図1.png

図2.png

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