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お知らせ

       ヒトiPS細胞の肝臓細胞への分化誘導に成功!!
実用化に向けて(独)医薬基盤研究所と㈱リプロセルが共同研究開発を推進

2011年1月 6日

 独立行政法人医薬基盤研究所(大阪府茨木市、以下「基盤研」という。)では、平成20年度にスーパー特区研究として「ヒトiPS細胞を用いた新規in vitro 毒性評価系の構築(研究代表者:水口裕之 基盤研 幹細胞制御プロジェクト チーフプロジェクトリーダー)」が採択され、京都大学をはじめ全国の研究機関・企業と連携して、iPS細胞の創薬応用研究を推進してまいりました。
 この度ヒトiPS細胞の分化のなかでも、創薬応用に最も重要と言われている肝臓細胞への分化誘導に水口らの研究チームが成功し、実用化に向けてバイオベンチャーの株式会社リプロセル(横浜市港北区)と共同研究開発を行うこととなりました。
 また、この研究成果の一部が「Molecular Therapy」オンライン版に掲載されましたので、お知らせします。

■論文題名  Efficient Generation of Hepatoblasts From Human ES Cells and iPS Cells by Transient Overexpression of Homeobox Gene HEX

■著者  稲村充1,2、川端健二2,3、高山和雄1,2、田代克久2、形山和史1、櫻井文教1、豊田雅士4、阿久津英憲4、
宮川世志幸4、大喜多肇5、清河信敬5、梅澤明弘4、早川尭夫6,7、古江-楠田美保8,9、水口裕之1,2

1 大阪大学大学院 薬学研究科 分子生物学分野
2 独立行政法人医薬基盤研究所 創薬基盤研究部 幹細胞制御プロジェクト
3 大阪大学大学院 薬学研究科 医薬基盤科学分野
4 国立成育医療センター研究所 生殖医療研究部
5 国立成育医療センター研究所 発生分化研究部
6 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構
7 近畿大薬学総合研究所
8 独立行政法人医薬基盤研究所 難病・疾患資源研究部 培養資源研究室
9 京都大学再生医科学研究所 附属幹細胞医学研究センター・細胞プロセシング

■オンラインのURL http://www.nature.com/mt/journal/vaop/ncurrent/full/mt2010241a.html

【研究の概要】
 新薬開発には、1000億円程度の研究開発費と15~20年程度の開発期間を要し、また、約2万件の候補化合物の中から、薬効・毒性などの評価を経て医薬品として承認を受けるのは1件程度と言われています。
 この過程でしばしば問題となるのが薬物誘発性肝障害(肝毒性)ですが、医薬品の開発プロセスの早期に肝毒性を確度良く予測することは、創薬コスト削減・期間短縮・創薬シーズのヒット率の向上をもたらし、我が国の基幹産業のひとつである製薬産業の国際競争力向上に繋がると期待されています。
 これに関しては、ヒト初代培養肝細胞の利用により肝毒性評価の向上が見込まれるものの、我が国においては入手が困難であり、安定供給、継続性の観点からその利用には限界がある為、より安定かつ容易に使用できる肝毒性評価系の確立が望まれています。
 基盤研・幹細胞制御プロジェクトを中心とする研究チームは、独自開発した遺伝子導入技術(改良型アデノウイルスベクター)を駆使して、細胞分化に必要な遺伝子を分化ステージに応じて順次導入していくことで、この度、iPS 細胞から肝細胞への効率の良い分化誘導法の開発に成功しました。
 本技術を用いて分化誘導した肝細胞は、初代培養ヒト肝細胞と同等の薬物代謝酵素活性を示すことが判明しており、簡便かつ形質が安定した新規細胞評価系の基盤が整備され、新薬開発研究段階での毒性評価試験や薬物動態試験への応用が期待されます。

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【実用化に向けての展開】
 幹細胞研究の急速な発展に伴い、ES/iPS細胞などの幹細胞から分化した機能細胞を創薬研究に使用するという試みがグローバルで本格化しています。
 具体的には、ES/iPS細胞から作成した心筋細胞、肝細胞、神経細胞など各種分化細胞を用いて、創薬の薬効試験、毒性試験、代謝試験を行います。
 これらの細胞はヒト細胞であり、かつ、生体内に近い機能を有することから、臨床試験の結果を、正確かつ迅速に予測可能なアッセイ方法として注目を集め、新薬開発の大幅な効率化に繋がるものと期待されています。
 株式会社リプロセルは、世界に先駆けてヒト多能性幹細胞を用いた創薬技術の事業化を進めており、2009年4月にiPS細胞由来心筋細胞の事業化、2010年10月に、iPS細胞由来神経細胞の事業化に成功しています。
 この度、iPS細胞創薬事業の第三弾として、世界的に最もニーズの高い肝細胞の事業化開発に着手いたします。
 具体的には、基盤研で開発された「改良型アデノウイルスベクターによる肝細胞への分化誘導技術」の技術導入を行い、基盤研との共同開発を通じて、1-2年以内の早期の事業化を目指します。
 本技術のiPS細胞由来肝細胞は、現在製薬企業で使用されている初代培養ヒト肝細胞と同等の薬物代謝酵素活性を示すなど、これまでにない高いレベルの技術であり、毒性評価試験や薬物動態試験への早期の応用が期待されます。

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