HOME › お知らせ › TNF-TNFR2複合体の構造を解明ー次世代型バイオ医薬品(免疫難病治療薬)の開発に向けてー

お知らせ

         TNF-TNFR2複合体の構造を解明
ー次世代型バイオ医薬品(免疫難病治療薬)の開発に向けてー

2010年12月24日

 独立行政法人医薬基盤研究所バイオ創薬プロジェクト(プロジェクトリーダー 角田慎一)らの研究チームは、TNF-TNFR2複合体の立体構造を解明することに世界に先駆けて成功し、その研究成果が、Science Signaling誌に掲載されましたのでお知らせ致します。

論文タイトル: Solution of the Structure of the TNF-TNFR2 Complex
掲載誌: Science Signaling, 3(148): ra83 (2010)
http://stke.sciencemag.org/cgi/content/abstract/sigtrans;3/148/ra83

 本研究は、大阪大学大学院薬学研究科薬剤学分野、熊本大学大学院薬学教育部機能分子構造解析学分野、大阪大学臨床医工学融合研究教育センター、大阪大学大学院薬学研究科毒性学分野との共同研究によるものです。

【概要】
 腫瘍壊死因子(TNF)は、関節リウマチや潰瘍性大腸炎など、種々の免疫難病の病態に関わる分子として知られ、現在、TNFの作用を阻害する抗TNF薬は全世界の医薬品市場においても大きな売上を占めています。しかし、TNFは身体の免疫を司る重要な分子であるため、生理的に必要なTNFの作用までも完全に抑えこんでしまうと、感染症に対する抵抗性を失うといった重篤な副作用を招く可能性があります。
 そこで、TNFが作用する2種のレセプター、TNFR1及びTNFR2のうち、一方のレセプターのみをブロックする医薬が、上記の副作用を回避しうる次世代の免疫難病治療薬になり得るものと期待されています。このような医薬を設計するためには、各レセプターの立体構造を知る必要がありますが、これまではTNFR1の構造しか明らかとなっていませんでした。
 そこで当研究チームは、X線結晶構造解析法により、新たにTNF-TNFR2複合体の解析を試み、その構造決定に成功しました。さらに、TNFR2からのシグナル伝達の際には、細胞表面でTNF-TNFR2複合体同士がネットワークを形成することを示し、このネットワーク形成阻害も新たな創薬標的になる可能性を見出しました。
 本成果は、TNFR1とTNFR2の立体構造がどのように違うのか、レセプターのどの部分を狙えば一方のレセプターだけをブロックできるのかなど、既存の抗TNF薬の課題を克服する次世代型バイオ医薬の開発等に有用な情報を提供するものと期待されます。

101224b.jpg

scisig3.jpg

一覧へ戻る

このページの先頭へ