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お知らせ

メラニン合成を制御する紫外線防御の新たな機構を解明!!

2010年12月 1日

【概 要】
 独立行政法人医薬基盤研究所の竹森 洋プロジェクトリーダー(代謝疾患関連タンパク探索プロジェクト)らは、関西大学、大阪大学、(株)プロテイン・エクスプレスとの共同で、紫外線防御における新たな機構を解明しました。
 紫外線は遺伝子DNAに傷をつけてしまうという大変有害な作用を持っています。微生物から哺乳類までほぼ全ての生物は紫外線に対する様々な防御機構を備えておりますが、とりわけ哺乳類はメラニンという色素を皮膚や目の表面に配置することで紫外線が細胞内へ透過することを防いでおります。
 哺乳類は紫外線によるDNAの損傷を感知してメラニン合成ホルモン(MSH)を分泌し、メラニン合成細胞にメラニン合成を指示すると考えられております。今回はメラニン合成細胞自身が普段からメラニン合成を止めている機構を発見しました。その止めている因子は塩誘導性キナーゼ2(SIK2)と名付けた因子です。この因子の量が少なくなればメラニン合成が自動的に引き起こされることが分かりました。紫外線はSIK2の量を直接的に低下させる作用がありました。また、MSHの作用はSIK2の働きを弱めることも分かりました。
 欧米人の多くは、MSHの働きが少ないために、メラニンの合成量が少ないことが分かっています。また、同時に髪の毛は黄色です。マウスにおいても同様な黄色い毛のマウスがいます。そこで、この黄色いマウスのSIK2遺伝子を人為的に破壊すると、産まれた子供の毛は茶色でした。もともと野生のマウスの毛は茶色であることから、欧米人型の毛色マウスが野生の毛色に戻ったことを意味します。
 本成果はPigment Cell Melanoma Res誌の12月号に掲載されました。

■論文題名:Downregulation of SIK2 expression promotes the melanogenic program in mice
  http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1755-148X.2010.00760.x/abstract

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【応 用】
 欧米人はメラニン合成能力が低いため皮膚癌が多発することから皮膚癌の予防につながると期待されます。特に、紫外線に感受性の高い難病の色素性乾皮症(XP)患者さんの紫外線防御に役立つ研究へと発展させております。
 また、マウスの毛色は様々な病態に密接に関係しています。例えば、食欲もMSHで制御されており、今回利用した黄色マウスは過食肥満モデルとしても利用されています。そのため、食欲制御の新たな技術開発にも役立つと期待されます。
 さらに、SIK2は神経生存にも重要であることが分かりました。神経変性を伴う難病や認知症患者さんのための研究にも役立ちます。
 SIK2を阻害してメラニン合成を促進させる天然物をいくつか同定し特許出願も行い、創薬への応用研究も行っております。

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