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お知らせ

創薬ターゲットの絞り込みを支援する統合データウェアハウス"TargetMine"を開発しました!!
 ― 世界の主要な16のライフサイエンス関連データベースを統合的に検索 ―

2010年11月 9日

【概 要】
 独立行政法人医薬基盤研究所(大阪府茨木市、以下「基盤研」という。)の水口賢司プロジェクトリーダー(バイオインフォマティクスプロジェクト)らは、この度、創薬ターゲットとしての候補遺伝子や候補蛋白質関連情報を検索し、候補絞り込みを支援するための統合データウェアハウス"TargetMine"を開発し、公開を始めました(http://targetmine.nibio.go.jp)。

※本研究はNEDO平成19年度産業技術研究助成事業により支援を受けたものです。
※データウェアハウスとは、「意思決定のために、目的別に編成され、統合されたデータの集合体」のこと

【背景と研究手法】
 創薬研究のプロセスにおいては、ゲノミクスなどの実験から多数の疾患関連候補遺伝子が見いだされても、対象を絞りこんで次の実験を行ない、最終的に新規創薬ターゲットの創出まで進めないのが、現在の大きな問題になっています。その原因の一つとして、興味のあるタンパク質や疾患についての多くのデータを十分に活用しきれていないことがあります。
 水口らが開発したTargetMineでは、現在までに遺伝子関連データベースであるEntrezGene(米)やタンパク質関連データベースのUniProt(国際)など国際的に広く使用されている主要な16個の公共データベースからのデータを統合し、既存の公共ツールでは行なうことができない、タンパク質立体構造や医薬品関係データ、転写因子とその作用遺伝子の関係等の情報の統合的検索を可能にしました(図1)。
                    

図1   ※画像をクリックすると拡大画像を表示します↓
図1s.jpg

 また公共データベースに入っていない、独自のアノテーション(あるデータに対して関連する情報を注釈として付与すること)や実験結果を組み込む仕組みが提供されているのも大きな特徴です。
 このシステムの強みを活かして、複数の候補遺伝子または候補タンパク質から、任意の関連性(特定の機能や疾患との関連性など)を有する遺伝子又はタンパク質を絞り込む手法を開発しました。

【本データウェアハウスの応用】
 この絞り込み手法を用いて、様々な疾患に関する実験データの解析を開始して成果を得ています。
 例えば、C型肝炎ウィルス(HCV)の作るコアタンパク質と宿主(ヒト)のタンパク質との相互作用が肝癌の発症に重要であることは知られていましたが、詳しいメカニズムは不明であり、このパスウェイに関与するヒト遺伝子は明らかではありませんでした。
 そこで水口らは、大阪大学微生物病研究所の松浦善治教授、森石恆司准教授(現山梨大学大学院医学工学総合研究部教授)らのグループと共同で、ウイルスタンパク質と宿主の細胞ネットワークを結びつけている459の宿主遺伝子を解析しました。
 今回開発した絞り込み手法を用いて、これら459の候補遺伝子から4つを絞り込むことに成功しました。そのうちの3つ(ENO1、PXN、SLC25A5)については、実際にHCVの複製またはウィルス産生に関与することを実験的に検証し、これらの遺伝子が、HCV治療の潜在的な新規ターゲットに成り得ることを示しました(図2)。



図2   ※画像をクリックすると拡大画像を表示します↓
図2s.jpg
 この結果は、Molecular Biosystems誌の、平成22年10月にオンライン版Advance Articleとして出版され、既に世界各所から反響を得ています(文献1)。
 http://pubs.rsc.org/en/Content/ArticleLanding/2010/MB/C0MB00103A

【今後の展開】
 今後は、このデータウェアハウスを活用して、企業や研究機関と共同研究を行い、難治性疾患の治療薬開発など、実際の創薬開発プロセスにおける新規ターゲットの同定を進めてまいりたいと考えています。

文献
1. Tripathi, L.P., Kataoka, C., Taguwa, S., Moriishi, K., Mori, Y., Matsuura, Y. and Mizuguchi, K. (2010). Network based analysis of Hepatitis C virus Core and NS4B protein interactions. Molecular bioSystems, DOI: 10.1039/c0mb00103a.

【統合的検索ができる16のデータベース】
1. Entrez Gene(米), 2. Ensembl(欧州)- 遺伝子の基本的な情報
3. Uniprot (国際) − タンパク質の基本的な情報
4. InterPro (欧州) − タンパク質ドメイン情報
5. PPIView(日本), 6. BioGrid(国際) - タンパク質(遺伝子)間の相互作用情報
7. Gene Ontology(国際) − タンパク質(遺伝子)の機能注釈
8. PDB(国際), 9. SCOP(英) - タンパク質の構造情報
10. KEGG(日本) - 生物学的パスウェイの情報
11. OregAnno(国際), 12. AMADEUS(イスラエル)-- 転写因子情報
13. Enzyme(スイス) − 酵素関連情報
14. DrugBank(カナダ) - 医薬品情報
15. OMIM(米), 16. Disease ontology(米)− 疾患関連情報

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