VI臨床試験

医薬品の承認を得るために必要なデータを収集するためにはGCPに則った臨床試験(治験)を実施する必要があります。これ以外にも以下のような規則やガイドラインがあります。

1.治験計画届出制度

治験を実施する前には、治験を依頼しようとする者又は自ら治験を実施しようとする者は、薬事法第80条の2第2項(治験届出)および薬事法第80条の3第1項(総合機構による調査実施)に従い、治験計画届を総合機構に提出しなければなりません。また、国内で初めて治験を行う場合は、治験計画届の提出日から30日間は総合機構が調査を行うため、治験を開始することはできません。なお、「治験計画届」はプロトコールごとに提出し、届出事項に変更が生じた場合は「治験変更届」、治験が終了した場合は「治験終了届」、何らかの理由で中止した場合は「治験中止届」をそれぞれ提出する必要があります。治験届には、プロトコールの他、最新の治験薬概要書(機器の場合、最新の治験機器概要書)、被験者への同意説明文書案なども添付する必要があります。また「治験のあり方に関する検討会報告書(平成19年9月19日)」を受けて施行規則改正(H20.2.29改正省令25)や治験計画届出の取扱い通知が発出され、届出の一部簡素化などが行われています。治験計画届の書式や必要な資料などは、以下の通知を参照してください。
[治験]:「薬事法等の一部を改正する法律の施行について」(H9.3.27薬発421)、「薬事法及び採血及び供血あつせん業取締法の一部を改正する法律の一部の施行について」(H15.5.15医薬発0515017)」、「治験の依頼をしようとする者による薬物に係る治験の計画の届出等に関する取扱いについて」(H20.8.15薬食審査発第0815005)
[医師主導治験]:「薬事法及び採血及び供血あっせん業取締法の一部を改正する法律の一部の施行について」(H15.5.15医薬発0515017)、「自ら治験を実施しようとする者による薬物に係る治験の計画の届出等に関する取扱いについて」(H20.8.15薬食審査発第0815001)
[機械器具等の治験]:「機械器具等に係る治験の計画等の届出等について」(H19.7.9薬食発0709004)、「機械器具等に係る治験の計画等の届出様式の一部改正について」(H21.4.1薬食発0401012)、「機械器具等に係る治験の計画等の届出の取扱いについての一部改正について」(H21.4.1薬食機発0401001)

2.治験中の副作用報告等制度

治験中に治験の対象とされる薬物又は機械器具等により、副作用や感染症あるいは不具合が起こった場合には、治験依頼者あるいは自ら治験を行う者は、薬事法第80条の2第6項(副作用・感染症報告)および薬事法第80条の4第3項(総合機構に報告)に従い、副作用・感染症報告を総合機構に提出しなければなりません。また、報告のうち、治験薬概要書(又は治験機器概要書)から予測できないものは、報告書の提出とともに各医療機関の長と治験責任医師に直ちに伝達することが求められています。副作用報告は、重篤性(死亡や後遺症など)、予測性(未知か、既知であってもその発生頻度が予測より高いなど)で報告期限や報告の必要性などが異なります。最近の改正(H17.10.25薬食審査発1025017、H20.2.29改正省令25)では、治験薬重篤副作用の定期報告制や既承認薬の治験における海外副作用症例の報告免除などが行われています。治験時の副作用報告については以下の通知を参考にしてください。
[薬物の治験]:「独立行政法人医薬品医療機器総合機構に対する治験副作用等報告について」(H16.3.30薬食発0330001、一部改正H17.12.15薬食発1215003)、「独立行政法人医薬品医療機器総合機構設立後の自ら治験を実施した者による治験副作用等報告について」(H17.10.25薬食審査発1025005、一部改正H20.10.1薬食審査発1001005)、「薬物に係る治験に関する副作用等の報告に係る薬事法施行規則の一部を改正する省令の施行等に関する留意事項について」(H20.10.1薬食審査発1001005)、「市販後副作用等報告及び治験副作用等報告について」(H18.3.31薬食審査発0331022・薬食安発0331009、一部改正H20.10.1薬食審査発1001009・薬食安発1001001)、「治験副作用等報告に関する報告上の留意点等について」(H18.4.26薬食審査発0426001)
[機械器具等の治験]:「独立行政法人医薬品医療機器総合機構に対する機械器具等に係る治験不具合等報告について」(H19.3.30薬食発0330001)、「独立行政法人医薬品医療機器総合機構に対する機械器具等に係る治験不具合等報告に関する報告上の留意点等について」(H19.3.30薬食機発0330001)

3.マイクロドーズ臨床試験

被験物質のヒトにおける薬物動態に関する情報を医薬品の臨床開発の初期段階に得ることを目的に実施される「マイクロドーズ臨床試験の実施に関するガイダンス」(H20.6.3 薬食審査発0603001)が作成されています。薬効量の確定、一種類の哺乳類の雌雄を用いる拡張型単回投与毒性試験(予定投与経路で投与し、2週間の観察を行う)、RI使用の場合は被爆量の安全確認の後に、ヒトにおける薬効推定量の1/100未満か100μgのいずれか少ない用量の被験物質を健康な被験者に投与して、試験をします。

4.医薬品の臨床試験

臨床試験は以下のPhase(相)で分類され、通常、PhaseTからPhaseU、PhaseVへと開発は進行します(表4)。医薬品では、臨床評価に関する様々なガイドラインがあり、臨床評価に共通なガイドラインはICHで作成される場合が多いです。「臨床試験の一般指針について」(H10.4.21)や「臨床試験のための統計的原則」(H10.11.30)などは試験計画を策定するにあたり、参考になります。また、薬効群別のガイドラインも作成されており、最近であれば、「抗悪性腫瘍薬の臨床評価方法に関するガイドライン」(H17.11.1薬食審査発1101001)、「抗リウマチ薬の臨床評価方法に関するガイドライン」(H18.2.17薬食審査発0217001)、「過活動膀胱治療薬の臨床評価方法に関するガイドライン」(H18.6.28薬食審査発0628001)があります。

表4 臨床試験の分類

臨床試験の分類

5.治験薬の品質保証

医薬品の品質保証で詳述したように、実生産に向けた製品の規格や試験方法の設定によりGMPに適合した治験薬を供給することは治験の実施に重要です。治験薬の品質を保証することで品質不良の治験薬から被験者を保護することを目的として、治験薬を製造する際に遵守すべきガイドライン「治験薬の製造管理、品質管理に関する基準(治験薬GMP)について」(H20.7.9薬食発第0709002号)が定められています。治験薬の製造管理及び品質管理に求められる要件は、開発の進展に連動すべきものであることから、早期探索的段階を含めて治験の特性を考慮し、治験の各段階に応じた治験薬の品質保証が可能となるように改正されました。


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