緒言

近年の科学の進歩は目覚しく、大学や研究機関の基礎研究者の成果を迅速に実用の場に提供するべきだという機運が高まり、基礎と実用をつなぐトランスレーショナルリサーチの重要性が指摘されています。医薬品もライフサイエンスの重要な成果として期待されているもののひとつです。これまで医薬品の開発は専ら製薬企業が行ってきました。医薬品の品質、有効性、安全性を明らかにする試験についてはガイドラインや基準が規制当局から示され、それに適合するべく企業の体制が整備され、厳しく運用されてきています。この製薬企業の開発環境と大学等での研究環境との乖離は大きく、大学のシーズを効率よく企業が引き継ぐことができないと指摘されています。本冊子は、このような乖離を少しでも少なくし、早い段階から薬事法を意識した質の高い研究開発が行われるよう、大学等で医薬品の候補となるものを実用化されようとしている研究者やその支援をされているコーディネーターの方々に対し、薬事法に沿った医薬品開発の要点をお知らせする目的で作成されました。また、薬事法上、医療機器にも分類される再生医療についてもバイオテクノロジーの応用分野として重要なのであわせて紹介しています。

第二版改訂にあたって

平成19年4月に国は「革新的医薬品・医療機器創出のための5か年戦略」(以下、「5か年戦略」)を策定しました。「5か年戦略」では、革新的医薬品・医療機器の産業化を通じて日本の成長をけん引するとともに、世界最高水準の医薬品・医療機器を国民に迅速に提供することを目標に、「ベンチャー企業の育成」のための萌芽的技術をビジネスにつなげるための支援策、「臨床研究・治験環境の整備」に向けた国際共同治験の推進、「審査の迅速化・質の向上」を目的とする新たな技術(マイクロドーズ等)を用いた医薬品の評価手法や細胞・組織を利用した医療機器や医薬品に係る安全評価基準の整備等の重要な戦略施策を提示しました。本改訂版の発行にあたっては、医薬品・バイオ研究の実用化に向け、「5か年戦略」で示された重要な施策を反映させるべく改正された薬事規制の内容を盛り込み、医薬品開発の最新の全体像を知っていただくように配慮しています。

関係各位に医薬品開発の全体像を知っていただき、企業との連携の際の一助としていただければ幸いです。

主任研究者 平山佳伸

略語

総合機構:独立行政法人 医薬品医療機器総合機構

ICH:The International Conference on Harmonisation of Technical Requirements for Registration of Pharmaceuticals for Human Use 日米EU医薬品規制調和国際会議

バイオ医薬品:バイオテクノロジーを応用した医薬品(再生医療関連の医療機器も含む)

参考法令・通知の表記について

法律…○○法律△△

厚生労働省令…○○省令△△

厚生労働省告示…○○告△△

通知…○○薬食発△△(医薬食品局長通知の場合)
…○○薬食審査発△△(医薬食品局長審査管理課長通知の場合)

○○:年月日、△△:法令・通知番号

※これらの番号を用いて厚生労働省ホームページから検索することが可能です(巻末リンクを参照ください)


前のページへ
目次
次のページへ