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スーパー特区

国際的なヒトiPS細胞標準化の動き

独立行政法人法人医薬基盤研究所:古江-楠田 美保(平成22年8月)

ヒトES細胞及びヒトiPS細胞は、成体の様々な組織に分化することができることから、再生医療、創薬、毒性評価、ワクチン作成への応用など様々な可能性を持っています。また、疾患メカニズム解明への応用も期待が高まっています。

しかし、まだ、新しい細胞であるため、その特性など、まだ十分解明されていません。また、研究室によって、結果が異なることもしばしば報告されています。

そこで、ヒトESやiPS細胞とは、どういうものなのか、世界中の細胞を集めて比較を行って標準化を行うプロジェクトが進められています。このプロジェクトで行われている標準化は、標準的な株を決めるということではなく、ヒトES/iPS細胞が、どのような共通する特性を持つのかを明かにしていくことです。これにより、ヒトES/iPS細胞についての共通認識を持ち、応用法開発を活性化することを目的としています。

当初はヒトES細胞を中心に考えられていましたが、2007年にヒトiPS細胞が発明されてからは、ヒトiPS細胞も同様に考慮されています。

【国際幹細胞フォーラム(ISCF)】

第1回The International Stem Cell Forumの会議が2003年にパリで開催されました。このフォーラムには、米国、イギリス、フランス、ドイツ、日本など22カ国が参加し、グローバルにヒトES/iPS細胞などヒト幹細胞の研究を推進するために、助成金が集められました。

【国際幹細胞イニシャティブ(ISCI) 】

フォーラムの助成を受けてThe International Stem Cell Initiative(ISCI)が2005年より、世界中のヒトES細胞研究者が集まり、どのような解析を行って、ヒトES細胞を比較して標準化を行うべきかをディスカッションし、下記Studyが行われました。(Nat Biotechnol. 2005 Jul;23(7):795-7: The International Stem Cell Initiative: toward benchmarks for human embryonic stem cell research.)ISCIの座長はイギリス・シェフィールド大学のピーター・アンドリュース教授とカリフォルニア大学のマーティン・ペラ教授で、日本からは京都大学・中辻憲夫教授らが参加しています。

ISCIはこれまで、フェーズⅠ(ISCI-I 2005年~(2006)年)及びフェーズII(ISCI-II ( 2007 ) 年~(2009)年)が行われ、2010年からはISCI-IIIが行われています。

☆ISCI-1:

11カ国18研究室からのヒトES細胞を登録し(http://www.stem-cell-forum.net/ISCF/initiatives/isci/stem-cell-registry/) 、未分化な状態と胚様体を形成させて分化させた状態での未分化マーカー・分化マーカーの発現をRT-PCRアレイ、FACSを用いて、解析を行いました。

■ISCI-1が策定した標準化プロトコールならびにデータ:

☆ISCI-2:

世界4拠点(UCLA/Martin Pera教授、WiCell研究所/Tenneille Ludwig博士、カロリンスカ研究所/Outi Hovatta 博士、京都大学/中辻憲夫 教授)の研究室が、ヒトES細胞の12の無血清培養を試みました) 。

また、ヒトES/iPS細胞200株以上を集めて、培養初期と長期継代後でAffymetrix SNP 6.0 array 解析を行いました。そのうち、ヒトES細胞17株について、24%がヘテロ接合性欠失を生じ、66%がコピー数多型が変化していたことをNature Biotechnologyで報告しています。

■ISCI-Ⅱのプロトコールと解析結果:

☆ISCI-3:

2010年より、ヒトES/iPS細胞の分化プロトコール比較を行う国際協力プロジェクトが開始しました。

■ISCI-IIIの活動開始:

http://www.stem-cell-forum.net/ISCF/initiatives/isci/isci-3/

【国際ヒト幹細胞バンキングイニシャティブ・プロジェクト(ISCBI)】

http://www.stem-cell-forum.net/ISCF/initiatives/international-stem-cell-banking-initiative/
以上の標準化の結果を受けて、2007年よりUK幹細胞バンクを中心として、米国、フランス、ドイツ、日本など世界の幹細胞バンクの研究者によりISCBIが開始されました。このプロジェクトでは、バンクで資源化するために必要なヒトES/iPS細胞の品質評価検査法、機能評価検査法のガイドラインを出しています。

■ISCBIが策定したガイドライン:

【細胞の登録について】

米国NIHでは、NIHの助成金で使用できるヒトES細胞の登録を行っています。http://www.stem-cell-forum.net/ISCF/initiatives/international-stem-cell-banking-initiative/

また、米国マサチューセッツ医科大学では、米国内外の非営利機関、アカデミックセンター、研究企業、細胞バンクなどの発表、未発表のヒトES/iPS細胞についてのデータベースを作成して公開しています。(http://www.umassmed.edu/iscr/index.aspx)文献情報から、マーカーの発現、HLAのタイピングなどをファイリングしています。

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