2022.8.15
, EurekAlert より:
ウォーキングなどの中強度の身体活動を週あたり300〜600分、または水泳など高強度の身体活動を150〜300分、長期的な死亡リスクが最も低いことが、10万人以上の参加者を30年に渡り追跡した調査結果から明らかになった。米・ハーバード公衆衛生大学院の研究。
定期的な身体活動が心血管疾患や早死のリスク低下に関連していることは十分に立証されている。2018年に、米国保健社会福祉省の「米国人のための身体活動ガイドライン」では、中程度の身体活動を150〜300分/週以上、または高強度の身体活動を75〜150分以上/週、またはこれら両方の強度の組み合わせにより同程度の運動量としたものを行うよう推奨している。
同ガイドラインに基づき米国心臓協会では現在、中強度の有酸素運動を週に150分以上、または高強度の有酸素運動を週に75分以上、あるいは両方の組み合わせを推奨している。
「身体活動が健康に及ぼす潜在的な影響は大きいですが、推奨レベルを超えるような高レベルの長期的な高強度または中強度の身体活動を行うことが、心血管の健康にさらなる利益をもたらすのか、または有害な影響があるのかはわかっていません」と著者のドンフンリー博士は述べている。「私たちの研究では、数十年にわたる身体活動の自己報告活用して、中高年の長期的な身体活動と死亡率との関連を調べました。」
研究者は、1988年から2018年までの2つの大規模な前向き研究(対象者全員が女性看護師である健康調査および全員が男性医療従事者の追跡調査)から収集された10万人以上の成人の死亡率データと医療記録を分析した。参加者の63%が女性、96%以上が白人であった。 平均年齢は66歳で、30年間の追跡期間中の平均肥満度指数(BMI)は26 kg/m2だった。
参加者には2年ごとに質問票に回答してもらい、余暇の身体活動を自己報告した。2年ごとに更新および拡張された質問票には、健康情報、診断された病気、家族の病歴、タバコやアルコールなどの習慣、運動の頻度に関する質問が含まれていた。運動については、過去1年間のさまざまな身体活動に費やした1週間あたりの平均時間として報告してもらった。
中強度活動の例としては、ウォーキング、かんたんな運動、重量挙げ、および柔軟体操などとし、高強度活動はジョギング、ランニング、水泳、サイクリング、その他の有酸素運動とした。
結果、現在推奨されている中〜高強度の身体活動を毎週2回行っていた人は、長期的な死亡リスクが最も低いことがわかった。ほかにも、以下のような利点が明らかになった。
・高強度の身体活動のガイドラインを満たした参加者は、心血管疾患による死亡リスクが31%低く、それ以外の死亡リスクは15%低く、全死因による死亡リスクが19%低くなっていた。
・中強度の身体活動のガイドラインを満たした参加者は、心血管疾患による死亡リスクが22〜25%低く、それ以外の死亡リスクが19〜20%低く、全死因による死亡リスクが20〜21%低くなっていた。
・高強度の身体活動を長期間、推奨量の2〜4倍(150〜300分/週)行った参加者は、心血管疾患による死亡リスクが27〜33%低下、それ以外の死亡リスクが19%低下、全死因による死亡リスクが23%低くなっていた。
・中程度の身体活動の推奨量を2〜4倍(300〜600分/週)上回った参加者は、心血管疾患による死亡リスクが25〜27%、それ以外の死亡リスクが25〜27%低下していた。全死因による死亡リスクは31%低くなっていた。
なお、推奨される活動レベルの4倍以上の活動を行っていた人に、心血管への悪影響は見られなかった。先行研究では、マラソン、トライアスロン、長距離自転車レースなどの長時間にわたる高強度の持久運動が、心筋線維症、冠状動脈石灰化、心房細動、心臓突然死などの有害な心血管イベントのリスクを高める可能性を立証していた。
「この発見は、以前のいくつかの研究で観察された高レベルの身体活動に従事することの潜在的な有害な影響に関する懸念を減らすかもしれません」とリーは述べました。
ただし、推奨される週の最小値の4倍(長期の高強度の身体活動なら300分以上/週、中強度なら600分以上/週)を超えるレベルの身体活動を行ったとしても、死亡リスクの低下に対する効果は頭打ちとなり、さらなる恩恵はみとめられなかったという。
出典は『循環器』。 (論文要旨)
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