2022.7.20
, EurekAlert より:
調理の際に塩を全く使わない、厳格な減塩に取り組む心不全患者は、そうでない患者に比べて心不全で入院するなどのリスクが高いという。拡張機能不全タイプの心不全患者を対象とした、中国・中山大学附属第一医院の研究。
塩分摂取量の制限は心不全治療の重要な要素と考えられているが、制限のしすぎも予後を悪化させる可能性があることが示唆された。
米国心臓協会による心不全のガイドラインでは、塩分制限が繰り返し推奨されており、その推奨量は1日あたり1.5g〜3g未満)と厳しいものだ。この推奨量については、拡張機能不全の心不全患者に対する影響は、これまでほとんど調査されてこなかった
心不全の全症例の半分を占める、拡張機能不全は、拡張期に左心室が充分に広がらず、適切な量の血液が入らないことで発生する。よって体内に送り出される血液量は減少する。
塩分摂取量との関連を調査するために、研究グループは、TOPCAT臨床試験参加者で拡張機能不全の50歳以上の米国人患者1,713人のデータを分析した。
対象者には、ご飯、パスタ、ジャガイモなどの主食、スープ、 肉料理、野菜料理、などの調理の際にふだん加える塩の量を尋ねた。その量によって対象者を次の4群に分けた。0ポイント群(塩不使用)、 1ポイント群(小さじ1/8)、 2ポイント群(小さじ1/4)、3ポイント群(小さじ1/2以上)。
次に、心血管疾患による死亡または心不全による入院と心拍再開した心停止の複合である主要エンドポイントなどについて、彼らの健康状態を平均3年間モニタリングした。
参加者の約半数(816人)は調理時に塩を使わない「0ポイント群であった。このうち半数以上が男性(56%)で、ほとんどが白人(81%)だった。0ポイント群は、1〜3ポイント群よりも有意に体重が多く、拡張期血圧が低かった(70mmHg)。
また、0ポイント群は心不全での入院回数が多く、2型糖尿病、腎機能の低下、心不全の薬の服用、および左心室駆出率の低下(心拍出量の低下)を起こす可能性が高くなっていた 。
1〜3ポイント群の人は、0ポイント群よりも主要エンドポイントのリスクが有意に低かった。これは主に、心不全で入院する可能性が低いという事実によるものである。とはいえ、0ポイント群よりも、全死因または心血管疾患による死亡リスクが低いわけではなかった。
年代別にみたところ、70歳以下の人は70歳以上の人よりも、主要評価項目および心不全による入院に関して、1〜3ポイント群の方が0ポイント群よりもリスクが大幅に低下していた。
なお、性別、心不全による過去の入院歴、および心不全薬の使用は、測定された結果および調理塩スコアのリスクの上昇とは関連していなかった。
これは観察研究であるため、因果関係を立証するものではない。また、健康状態の悪い人々がさらなる塩分制限をアドバイスされていた可能性を排除することはできない。 厳しい塩分制限と今回の結果との間にあるメカニズムは明確にはなっていないが、研究者は「厳格すぎる塩分制限は「拡張機能不全の心不全」の患者に害を及ぼす可能性があり、予後の悪化につながります。医師は患者にこのアドバイスを与えることを再考する必要があります」としている。
出典は『心臓』。 (論文要旨)
|