2022.7.4
, EurekAlert より: 
炭水化物は、血流に到達する前でさえ、食事の視覚と匂いでインスリンの分泌を引き起こす。瑞バーゼル大学の研究チームは、このインスリン分泌がこれらの状況で起こる短期間の炎症反応に依存することを初めて示した。肥満者ではこの炎症反応が極めて過剰なため、インスリン分泌を損なう可能性があるという。
次の食事の予感でさえ、体の中で一連の反応を引き起こす。おそらく最もよく知られているのは、口中の唾液分泌であるが、血糖値を調節するホルモンであるインスリンも、我々が最初の食品を口に入れる前に分泌されるという。専門家はこれを神経介在性のインスリン分泌と呼んでいる。
けれども、これまで食事の知覚が膵臓にインスリン産生を増加させる信号をどのように作り出したかは不明だった。今回研究チームは、パズルの重要な部分を特定したという。それは、病原体に対する免疫応答や組織の損傷にも関与するインターロイキン-1ベータ(IL-1β)として知られる炎症性因子である。
「この炎症性因子が、健康な人の正常なインスリン分泌にも深く関与しているらしいという事実は、それが2型糖尿病の発症にも関係するので、驚くべきことです」と主任研究者のマーク・ドナス教授は説明している。
「成人発症型糖尿病」としても知られるこの形態の糖尿病は、とりわけ膵臓のインスリン産生細胞に損傷を与える慢性炎症によって引き起こされる。これは、IL-1βが重要な役割を果たすもう1つの状況である。この場合、IL-1βは大量に産生され分泌される。
神経を介したインスリン分泌に関しては、状況が異なるという。「食事の匂いと光景は、ミクログリアとして知られる脳内の特定の免疫細胞を刺激します」と共筆頭著者のソフィア・ヴィーデマン博士は述べている。「これらの細胞はIL-1βを短時間分泌し、IL-1βは迷走神経を介して自律神経系に影響を及ぼします。」次に、このシステムは信号をインスリン分泌部位、つまり膵臓に中継する。
だが、病的肥満の場合には、この神経を介したインスリン分泌の段階は中断される。特に最初の過剰な炎症反応によって、と共筆頭著者のケリー・トリミグリオッジ博士候補生は述べている。
「私たちの結果は、IL-1βが食事の視覚や嗅覚などの感覚情報を、その後の神経を介したインスリン分泌と結び付け、この関係を調節する上で重要な役割を果たしていることを示唆しています」とマーク・ドナス教授はまとめている。
出典は『細胞代謝作用』。 (論文要旨)
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