2022.6.21
, EurekAlert より: 
食事が遺伝子発現に影響を与える可能性が明らかになってきているが、必須アミノ酸の一種であるメチオニンが過剰、または不足した食事は、肝細胞の脂肪代謝に関連する遺伝子と染色体を修飾する遺伝子の発現に影響を与えるようだ。ブラジル・サンパウロ大学の研究。
この研究では、メチオニンがDNAのメチル化(遺伝子のスイッチがONになること)にどのように影響するかを調査している。これは後成的な変化であり、個人の特性(表現型)を定義する遺伝子の発現プロファイルの変化を意味する。後成的な変化は、細胞分裂で繰り返され、子孫に伝播する可能性があるものの、DNA配列(遺伝子型)そのものの変化ではない。DNAのメチル化と病気との関係については、いま広く研究されている。
肝臓細胞の変化に関与する後成的なメカニズムを調査するために、研究グループはマウスにメチオニン欠乏またはメチオニン補充食を与え、肝臓から細胞を抽出して分子を分析した。
2014年に同グループが報告した先行研究では、食事によるメチオニンの欠乏と過剰が、肝臓での脂質蓄積につながる遺伝子発現の変化など、脂肪肝に関連する分子異常を引き起こす可能性があることが示された。またさらに、メチオニンが不足している場合にのみ肝細胞に脂肪が蓄積し、肝硬変、がん、その他の病気の素因をもたらすことを発見した。ただし詳しいメカニズムは不明であった。
今回の研究では、メチオニンの不足した食事、特にアミノ酸が不足している場合には、肝臓の恒常性に重要な役割を果たすいくつかのマイクロRNAの調節不全を引き起こす可能性があることがわかった。研究者のアイッサ氏は、肝臓の恒常性に関連するマイクロRNAの標的となる可能性のある遺伝子が多数検出されたほか、メチオニン欠乏食がこれらにより実質的な影響を与えていたと述べている。
出典は『食品化学物質毒性学』。 (論文要旨)
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