2022.5.17
, EurekAlert より:
健康リスクが懸念される薬剤耐性菌が腸内に少ない人は、バラエティ豊かな食生活を送っていることが明らかに。多様な食品から水溶性食物繊維を摂取することの重要性が示唆されている。米国農務省農業研究事業団の研究。
一般的に使用される抗生物質に耐性を持つ微生物、いわゆる薬剤耐性菌は、世界中の人々にとって重大なリスク源であり、この問題が今後数十年で悪化することが広く懸念されている。
人間の薬剤耐性は主に腸内細菌叢に基づいており、微生物は抗生物質に接触した際に生き残るため、遺伝的にコード化された戦略を実行することが知られている。
「そしてその結果は、食事療法の変更が薬剤耐性菌との戦いにおける新しい武器になる可能性があるという考えに直接つながります」などと、研究グループのリーダーであるレメイ氏は説明している。
この研究では、人間の腸内細菌の薬剤耐性菌の遺伝子のレベルと、食事中の食物繊維や動物性たんぱく質との関連性を調査した。
その結果、薬剤耐性菌遺伝子のレベルの低さは、食物繊維が豊富で動物性たんぱく質、特に牛肉と豚肉由来のたんぱく質が少ないことと関連していることが発見された。また薬剤耐性菌遺伝子のレベルが最も低い場合、偏性嫌気性菌が豊富に存在することも明らかになった。これらの菌が多いことは炎症の少ない健康な腸の特徴でもある。
一方、動物性たんぱく質の摂取量は、高レベルの薬剤耐性菌の最大の予測因子ではではなかった。強力な因子としては、水溶性繊維の摂取量の多さが上回り、さらに驚くべきことには、それ以上に食事の多様性が重要であることが明らかになったのだという。これは、最大の利益を得るためには、水溶性食物繊維が多い傾向にあるさまざまな食品を摂取することの必要性を示唆しています」とレメイ氏は付け加えた。
水溶性食物繊維はその名前が示すように、水に溶けるタイプの食物繊維で、大麦やオーツ麦などの穀物に含まれるほか、レンズ豆やそら豆、エンドウ豆などの豆類、チアシードなどの種子、ナッツ類、にんじん、ベリー、アーティチョーク、ブロッコリー、カボチャなどの果物や野菜などにも豊富に含まれている。
この研究はまだ始まったばかりとしながらも、レメイ氏は「私たちの食事は腸内微生物に食物を提供します。これはすべて、私たちが食べるものが腸内細菌叢を改変することによって薬剤耐性を減らすための解決策であるかもしれないことを示唆しています」と述べている。
出典は『mBio』。 (論文要旨)
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