2022.5.10
, EurekAlert より:
食物繊維の健康上の利点は個人によって異なり、繊維の種類と摂取量に依存する可能性があるようだ、という米国スタンフォード大学からの研究報告。
「私たちの結果は、個々の繊維の生理学的、微生物的、および分子的効果が大幅に異なることを示しています」と主任研究者のマイケル・スナイダー博士は述べている。「さらに、私たちの結果は、特定の繊維を使用して、微生物叢を媒介とし、健康とシステム生物学を予測可能なパーソナライズされた方向に推進する、という興味をそそる見通しを示しています。」
研究チームは、精製された個々の食物繊維成分が参加者にどのように影響するかを理解しようとした。具体的には、全粒穀物によく見られるアラビノキシラン(AX)と、タマネギ、チコリ根、キクイモに含まれる長鎖イヌリン(LCI)という2種類の一般的な構造的に異なる可溶性食物背にのサプリメントによる生理学的影響を検証した。
便メタゲノミクス、血漿プロテオミクス、メタボロミクス、リピドミクスを使用し、18人の参加者の血清サイトカインと臨床値を分析した。「食物繊維は代謝および心臓血管の健康の改善に関連していますが、マルチオミクスデータセットを使用して、個々の繊維が微生物および代謝反応に及ぼす影響を理解することは研究されていません」とスナイダー博士は言う。
参加者は、第1週に1日あたり10グラム、第2週に1日あたり20グラム、第3週に1日あたり30グラムの繊維を摂取した。
その結果、平均して、AXの消費は、悪玉コレステロールとして知られる低密度リポタンパク質(LDL)の大幅な減少、およびコレステロールの減少に寄与する可能性のある胆汁酸の増加と関連していたという。けれども、個々人の反応はさまざまであり、一部の参加者はコレステロール値にほとんどまたはまったく変化が見られなかった。
一方、LCIは、炎症マーカーの適度な減少とビフィズス菌の存在量の増加に関連していた。けれども、最高用量では、アラニンアミノトランスフェラーゼと呼ばれる肝臓酵素のレベルと炎症が増加した。これは、この食物繊維が多すぎると有害である可能性があることを示唆している。これらの潜在的に否定的な反応も参加者間で変動がみられた。
研究の制限として、期間が短く参加者が少ないことが挙げられる。だが、研究チームによると、この研究は、食物繊維誘発性コレステロール低下の背後にあるメカニズムへの洞察を提供し、イヌリンの大量消費の有害な影響を明らかにし、個々の精製繊維と微生物叢との関連を強調するものであるという。
「全体として、私たちの調査結果は、食物繊維の利点が繊維の種類、用量、および参加者に依存していることを示しています」とスナイダー博士はコメントしている。
出典は『細胞:宿主と病原菌』。 (論文要旨)
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