2022.1.11
, EurekAlert より:
8日間の集中的な瞑想が免疫系の強力な活性化を引き起こすことを発見した、という米国フロリダ大学からの研究報告。
この調査結果は、瞑想が病気の発症に直接関与する生物学的プロセスにどのように影響するかについての最初の包括的なゲノム研究と思われるという。研究の中心にあるのは、内面の幸福を強調する瞑想とヨガのプログラムである内面工学(Inner Engineering)の実践である。
瞑想のプラスの効果は多くの文献があるが、その分子的および遺伝的効果についてはほとんど知られていない、と主任研究者のヴィジャエンドラン・チャンドラン助教授は語っている。
チャンドラン博士の内面工学の分子的基礎に対する興味は、実際には彼の妻からの催促によって始まったのだという。48日試してみてよ、と彼女は言った。彼は1日21分それを試した。
「私はそれを試み、それは実際良好に働いたのです。私は良い気分でした」とチャンドラン博士は言う。それが彼の科学的な好奇心を呼び起こした。内面工学の実践は実際どのように身体に利益をもたらしたのか?
研究チームは、テネシー州にある「イシャ内面科学研究所」で2018年4月に実施された内面工学の参加者106名から実施前後の388検体を採取して遺伝的なプロフィールを検討した。参加者は8日間の沈黙、1日10時間以上の瞑想、ビーガン食、そして定期的な睡眠スケジュールを実行した。
血液検体は、実施の5−8週間前と実施直前、直後、そして3か月後に採取された。
ゲノム解析は最終的に、瞑想の実施後にいくつかの免疫関連および他の細胞経路が変化したことを発見したという。免疫応答に直接関連する220の遺伝子の活性が増加したことが明らかになった。ここには身体の抗ウイルスおよび抗がん反応の重要な部分であるインターフェロンシグナル伝達に関連する68の遺伝子の活性の上昇が含まれていた。免疫系の強化は、主として瞑想によるものであり、食事、睡眠パターン、性差によるものではなかった。
「私たちが見つけたのは、免疫系に関連する複数の遺伝子が、内面工学の実践を行うと、劇的に活性化されるということでした」とチャンドラン博士は述べている。
チャンドラン博士によれば、インターフェロンシグナル伝達遺伝子間の遺伝子活性の増加は特に重要であるという。インターフェロンたんぱく質は、ウイルスから防御するために免疫系の他の部分を結集し、いくつかの最近の研究は、インターフェロンシグナル伝達が重度のCOVID-19の患者で不均衡であることを示している。本質的に、瞑想はコア遺伝子とレギュレーターの調整されたネットワークを使用して、免疫系にプラスの効果を解き放つことを研究チームは発見したのだという。
「瞑想があなたのインターフェロンシグナル伝達を高めることができることを示したのはこれが初めてです。それは医薬品なしで免疫系に自発的に影響を与える方法を示しています」とチャンドラン博士は述べている。
研究チームは、この調査結果が、COVID-19や多発性硬化症などの多くの免疫関連状態にも潜在的な影響を与えると報告した。瞑想は68のインターフェロン関連遺伝子の活性を高めるが、重度のCOVID-19の患者には、ウイルスとの戦いを阻害するインターフェロン活性の不足という反対の問題があるという。
研究チームが瞑想参加者と重症のCOVID-19患者のインターフェロン遺伝子活性を比較したとき、その違いは明白だったという。瞑想はインターフェロン応答遺伝子の97%を活性化したが、軽度のCOVID-19患者では76%、重度のCOVID-19患者では31%だった。彼らはまた、炎症シグナル伝達遺伝子の逆の傾向を観察した。そこでは、軽度の病気の患者と比較して、重度のCOVID-19患者で有意に高レベルの炎症遺伝子が見られ、瞑想後の炎症遺伝子に変化はみられなかった。同様に、瞑想は、多発性硬化症患者に与えられる従来のインターフェロン治療に匹敵する有益な遺伝子活性を生み出した。
以上をまとめると、本調査結果は、瞑想が複数の健康状態を改善する可能性に寄与するという考えを支持している、と研究チームは結論付けた。
この調査結果は興味深いものだが、チャンドラン博士はまた、有益な遺伝子活性効果は、ランダム化臨床試験での再現を含む、さらなる研究が必要であると述べている。また長期的にそれほど強くない瞑想実践が同様の有益な免疫系効果を生み出す可能性があるかどうかを判断することも有用だろう、と述べている。
出典は『国立科学アカデミー論文集』。 (論文要旨)
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