2021.12.2
, EurekAlert より:
普通の粉ミルクを飲んで育った子と、脳の発達に良いとされる栄養素などを添加した粉ミルク7種のいずれかを飲んで育った子を比較したところ、思春期時点での学業成績に明確な差はみられなかったという。研究者は、認知能力向上を目的とした栄養素添加は不要なのではとしている。英・ロンドン大学グレート・オルモンド・ストリート小児健康研究所の研究。
母乳育児は乳児の栄養面で最適ではあるものの、生後6週間を超えると母乳育児率は多くの国で低くなっている。代わりに、乳児用調製粉乳(粉ミルク)が、母乳育児を補完または置き換えるために広く使用されており、世界中の6か月未満の乳児の60%以上が摂取している。
粉ミルクへの栄養素添加によって認知発達が促進されることが示唆されているが、長期的な利点が得られるという証拠はまだ決定的ではない。
そこで研究グループは、数種類の粉ミルクごとに、摂取していた赤ちゃんが成長後の、学業成績の違いを比較することにした。
具体的には、1993年8月から2001年10月の間に英国の5つの病院で1,763人の青年を対象に実施された、栄養素を添加された粉ミルク7種のランダム化試験の結果を分析した。
各試験を、添加されていた栄養成分ごとにみると、脳の発達に関与する多くの母乳成分の1つである長鎖多価不飽和脂肪酸(LCPUFA)を用いたものが2件、鉄を用いたものが1件、主要栄養素を増量したものが2件、認知に関連するとは考えられていない、β位結合パルミチン酸またはヌクレオチドが添加されたもの2件であった。
これらのデータを学校の記録と紐づけし、11歳と16歳時点での数学と国語の国家必須試験(GCSE)のスコアにどう影響したかを調べた。
その結果、いずれの粉ミルクを摂取していても、16歳での数学の試験結果に普通の粉ミルクを摂取していた子との相違は見られなかったが、LCPUFA添加の粉ミルクを摂取していた子供のみ、11歳時点での国語・数学の両方でスコアが低くなっていた。
本試験は数十年前に実施されたものであり、現在は粉ミルクの配合や新生児ケアが変化したため、一概に現在にあてはめることはできないが、高いフォローアップ率と、GCSEスコアの利用という強みがあるとし、乳児用粉ミルクに認知機能の向上を期待した栄養素を添加するメリットはない、と研究者は述べている。
出典は『英国医学雑誌(BMJ)』。 (論文要旨)
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