2021.11.18
, EurekAlert より:
非再建乳がん手術を受けた直後に運動する女性は、通常ケアを受ける女性よりも肩と腕の可動性が回復し、痛みが少ないように見える、という英国ワーウィック大学からの研究報告。
研究チームは、手術のわずか1週間後に開始する運動プログラムが、合併症のリスクが高い女性における乳がん手術後1年以内の上肢の障害を軽減するようであることから、臨床的効果も費用対効果も高いとしている。
乳がん治療後の肩と腕の問題は一般的であり、患者の最大3分の1が脇の下の動きの制限、慢性的な痛みまたは腫れ(リンパ浮腫)を経験し、生活の質を制限し、回復を遅らせる。
英国では、ガイドラインは非再建乳房手術後の運動の段階的な再導入を推奨しているが、術後の筋肉強化の理想的なタイミング、強度、安全性、または影響についての十分な証拠がない。
この不確実性に対処するために、研究チームは、構造化された運動プログラムが、乳がん手術後の上肢障害のリスクが高い女性の通常のケアと比較して、機能的および健康関連の生活の質を改善するかどうかを評価する試験を実施した。
本調査結果は、術後、17のNHSがんセンターで乳がん手術を受け、上肢の問題のリスクがあった392人の患者(平均年齢58歳)に基づくものである。
女性はランダムに2群に分けられた。一方の群は構造化された運動付きの通常ケア(情報リーフレット)を受け、別の一方の群は通常ケアのみを受けた。
「肩の問題の予防(PROSPER)」として知られる運動プログラムは、理学療法士が主導し、ストレッチ、強化、身体活動、行動変容のテクニックが含まれた。手術の7-10日後に導入され、1か月後と3か月後にさらに2回実施された。
手術の1年後、患者は詳細な質問票に記入するように求められ、活動レベル、痛み、腫れ、生活の質などが評価された。研究チームはまた、病院の記録を使用して、女性が健康と個人的な社会福祉を利用した頻度を調べた。
その結果、通常のケアと比較して、運動群では上肢機能が改善したことが示されたという。
12か月の時点で、運動群の女性は、通常ケア群の女性よりも痛みの強度が低く、腕の障害の症状が少なく、健康に関連する生活の質が優れていると報告した。重篤な有害事象は報告されなかった。
神経障害性疼痛、創傷関連合併症、手術部位感染、腫れ、またはその他の合併症の発生率には、2群間で差はみられなかった。
運動は費用対効果も高いことが証明されたという。運動プログラムの費用は、平均して、患者1人あたり129ポンドである。けれども、研究チームがすべての医療費と個人的な社会福祉費を考慮した場合、通常ケア群と比較して、運動群の患者1人あたりの平均節約額は387ポンドだった。
「早期の構造化された進行性の運動は、非再建乳房手術後に肩や上肢の問題を発症するリスクが高い女性にとって安全で臨床的に有効であるという確固たる証拠を発見した」と研究チームは結論付けている。
出典は『英国医学雑誌(BMJ)』。 (論文要旨)
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