2021.11.2
, EurekAlert より:
潜在的な脅威の匂いを検出して反応する能力は、人間をはじめとする哺乳類の生存の必須条件だ。カロリンスカ研究所の研究グループは先端技術によって、中枢神経系が嗅覚を危険と判断したときに脳で何が起こっているかを調査した。この研究では、不快感や不安に結びつく不快な匂いが良い匂いよりも素早く処理され、身体的回避反応を引き起こすことを示している。
「危険に関連する不快な臭いに対する人間の回避反応は、長い間意識的な認知プロセスと見なされてきましたが、私たちの研究は、それが無意識かつ極めて迅速であることを初めて示しています」と、研究の筆頭著者であるイラバニ氏は述べている。
嗅覚器官は人間の脳の約5%を占めており、何百万もの異なる匂いを区別することができる。これらの匂いの大部分は、化学物質や腐った食べ物など、私たちの健康と生存への脅威に関連している。匂いの信号は、鼻から吸入されてから100〜150ミリ秒以内という速さで脳に到達する。
あらゆる生物の生存は、危険を回避し、報酬を求める能力に依存する。人間の場合、嗅覚は潜在的に有害な刺激を見つけ出し反応するために特に重要であると思われる。
人間の不快な臭いを回避行動に変換するために、どの神経メカニズムが関与しているのは、長い間の謎だった。その理由の1つは、嗅球からの信号を測定する非侵襲的な方法がないことだ。嗅球とは、神経系の重要な中心部分に直接接続されている嗅脳(文字通り「鼻の脳」)の最初の部分であり、脅迫的で危険な状況や物質を検出して記憶するのを助ける働きをもつ。
研究グループは、嗅覚を処理し、身体の動きと回避行動を制御する脳の部分に信号を送信できる、人間の嗅球からの信号を測定方法を初めて開発した。
そこで今回、参加者には6つの異なる匂いの経験を評価してもらい、それぞれの匂いに反応したときの嗅球の電気生理学的活動を測定する3種類の実験を行っている。
研究者のルンドストローム准教授は、次のように述べている。「嗅球は、不快な匂いに特異的かつ迅速に反応し、300ミリ秒以内に運動野に直接的に信号を送ります。信号により、人は無意識のうちに嗅覚の源から身を引くのです。この結果は、私たちの嗅覚が身の回りの危険を検出する能力にとって重要であり、この能力の多くは視覚と聴覚によって媒介される危険への反応よりも無意識であることを示唆しています。」
出典は『国立科学アカデミー論文集』。 (論文要旨)
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