2021.10.14
, EurekAlert より:
運動ががん患者の病気との戦いにおける重要な武器であるかもしれない、という豪州エディスコーワン大学からの研究報告。
運動により、筋肉はミオカインと呼ばれるたんぱく質を血液中に分泌する。研究チームは、このミオカインが腫瘍の成長を抑制し、がん細胞と積極的に戦うのに役立つことを明らかにしたという。
本臨床試験では、肥満の前立腺がん患者10名(平均年齢73.3歳)が12週間の定期的な運動トレーニングを受け、運動プログラムの前後に採血された。さらに研究チームはサンプルを採取し、生きている前立腺がん細胞に直接適用した。
主任研究者のロバート・ニュートン教授は、この結果が、運動をしている患者のがんの進行が遅い理由を説明するのに役立つと述べている。「患者の抗がん性ミオカインのレベルは3か月で増加した」と彼は言う。「我々が参加者の運動前の血液と運動後の血液を取り、それを生きている前立腺がん細胞の上に添加したとき、運動訓練後の血液が、それらがん細胞の成長を有意に抑制したことを発見した。これは、定期的な運動が体内にがん抑制環境を作り出すことを示すものだ。」
筆頭著者のジンス・キム氏は、ミオカインはがん細胞の成長を遅くしたり完全に停止するように信号を送ることができるが、細胞を殺すことはできないと述べている。けれどもミオカインは血中の他の細胞と協力してがんと積極的に戦うことができるのだという。
「ミオカイン自体は細胞に死ぬように合図を出さない」とキム氏は言う。「けれども、ミオカインは我々の免疫細胞(T細胞)にがん細胞を攻撃して殺すように信号を送るのである。」
ニュートン教授は、運動はアンドロゲン除去療法(ADT)などの他の前立腺がん治療を補完するものであるという。ADTは、効果的で一般的に処方されているが、除脂肪体重の大幅な減少と脂肪量の増加につながる可能性がある。これは、サルコペニア性肥満(筋肉量の少ない肥満)、健康状態およびがんの転帰の悪化をもたらす可能性がある。
今回研究参加者は全員がADTを受けており肥満であったが、トレーニングプログラムによって、脂肪量を減らしながら除脂肪量を維持していることがわかったという。
本研究では、男性の間で最も一般的な非皮膚がんであり、患者の死亡数が多いことから、前立腺がんに焦点を当てたが、ニュートン教授は、この調査結果はより広い影響を与える可能性があると述べている。
「このメカニズムはすべてのがんに当てはまると我々は信じている」とニュートン教授はコメントしている。
出典は『スポーツ及びエクササイズの医療と科学』。 (論文要旨)
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