2021.7.29
, EurekAlert より:
ソーシャルメディア上のがんに関する人気記事の32.5%(65件)に誤りが含まれており、30.5%(61件)に有害な情報が含まれていた、というユタ大学の報告。
インターネットは健康に関する主要な情報源であり、さまざまな健康状態に関する誤った情報の温床でもある。この状況は、患者が生存や病気の転帰に対して害のある決定をくだす可能性があることから、緊急に対策を要する課題である。
ユタ大学ハンツマンがん研究所の医師であり放射線腫瘍学助教授である主任研究者のスカイラー・ジョンソン氏は、過去の研究や患者、医師、研究者、ジャーナリストとのディスカッションにより、不正確ながん情報を拡散する上でのオンラインメディア、とりわけソーシャルメディアが果たしている役割についてのテーマを見出した。また、ジョンソン氏は、ハンツマンがん研究所でがん患者のケアに従事する中で、患者から、ソーシャルメディアで見たという記事に関する質問を頻繁に受けたという。
「ソーシャルメディア上のがんに関する記事には明らかに誤った情報が蔓延している。また、このような記事のほとんどが有害な情報を含んでいる。」とジョンソン氏は話す。
ジョンソン氏らの研究チームは、ソーシャルメディア上のがん情報を量的、質的に把握するための研究に着手した。チームは医療専門家をパネルとして招集し、ソーシャルメディアサイトで最も人気のある記事200件において提示されているがん治療に関する情報をレビューし評価した。この研究では乳がん、前立腺がん、肺がん、大腸がんに関する記事に焦点が当てられた。
この結果、がん患者が受け取る誤った情報がどれほど一般的であるかが示された。対象となった200件の記事のうち、33%は誤った情報が含まれていた。誤った情報を含む記事のうち、77%は患者の転帰に悪い影響を与える可能性のある情報が含まれていた。
さらにこの研究では、誤った情報を含む記事が、根拠に基づいた情報を載せた記事よりも多くの注目を集めることが示された。
ジョンソン氏は、なぜ患者がソーシャルメディアなどオンラインでの情報を求めるのか理解していると話す。「がんになることは特殊で脆弱性のある状況である。患者は、新たな疾患と戦っている。彼らは自身の健康をコントロールしていることを実感し、希望を維持し続けるためにできる限りのことをしたいと考えている。彼らはがんの診断を受けた後、ソーシャルメディアを含む情報の洪水を経験する。一部の患者は情報を求め、そして一部の情報は善意ある家族や友人によってもたらされる。」
ジョンソン氏は、医師が患者とオープンなコミュニケーションを維持することを提唱している。ジョンソン氏の診療では、患者に対して、オンラインでがんに関する誤った情報に遭遇する可能性があることを知らせている。彼は、患者がインターネットやソーシャルメディアで得たがんに関する情報に疑問を感じたらそのことを知らせるように勧めている。
ジョンソン氏は、医師と患者が、誤った情報に関する困難な問題をより良く理解するために、ソーシャルメディアにおける誤った情報や有害な情報の予測因子を特定することを望んでいる。
「我々はこれらの問題に正面から取り組む必要がある。」とジョンソン氏は話す。「医療従事者として、我々はソーシャルメディア上のがんに関する誤った情報を無視することも、患者に無視するように言うこともできない。我々は患者の気持ちに寄り添い、彼らがこのような情報に遭遇したときに手助けする必要がある。我々のゴールは、がん患者の疑問に答え、彼らが最良の転帰を迎えるための機会を与えるような正確な情報を提供することである。」
出典は『国立がん研究所雑誌』。 (論文要旨)
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