2021.7.16
, EurekAlert より:
10代の若者の夢の仕事と、雇用の現実との間には重大な矛盾が存在する、というヒューストン大学からの研究報告。
「中高生のおよそ50%が科学、研究領域を含む調査系や芸術系の仕事を志向しているが、実際の米国の労働市場でこれらが占める割合は、合わせて8%に過ぎない」ヒューストン大学心理学助教授のケビン・ホフ氏は話す。ホフ氏らは、米国42州の13-18歳男女3,367名を対象にキャリア志向について調査した。
ホフ氏らの研究チームは、職業情報ネットワーク(O*NET)を使用して大規模なコーディングを実施し、職業自動化リスク、教育要件、職業興味についてまとめた。
「この調査の結果、中高生のほとんどが自動化のリスクが低い仕事を志望していた。しかしながら、中高生の志向と、実際に労働市場で得られる仕事の数との間には大きな隔たりがあった」とホフ氏は述べる。
女児において最も人気のあった職業は医師、獣医、教師、そして看護師だった。医師は13-15歳の女児において最も人気があり、約12%を占めた。一方、獣医、教師、看護師は16-18歳の女児に人気があった。男児では、13-15歳ではアスリートが圧倒的に人気で22-32%が志望していたが、成長が進んだ16-18歳ではその人気は5-13%と低下していた。
「男女ともに、年齢とともにキャリア志向の変動性が高まるという同様のパターンがみられ、より多様なキャリア目標を持つようになることが示された」とホフ氏は話す。実際のところ、現実味を帯びてきているのかもしれない。13歳男児の多くはプロアスリートを志向しているが、18歳になるまでに彼らの考えは、より達成可能な仕事を目指すように変化していた。
子どもたちが野心的でありながら現実的なキャリア目標を抱くのを助けるための最も重要な方法は、彼らが日常生活では目にしないような様々な種類の仕事にふれる機会をもたせることである。
「若い女児の多くが教師を志望する。彼女らは毎日教師を見ているためだ」とホフ氏は話す。「彼らに他の職業の存在を示すことも同様に重要といえる。特に、あまり知られていないが雇用の需要が高まっている、たとえばSTEM分野のような仕事である」ホフ氏によると、教師らは、仕事に対する非常に高い野心を持っているものの並の成績の生徒を指導するのに苦労することがよくあるが、そのような高い野心を持つことには利点もある。
「医師になりたいと願う中高生は、実際にメディカル領域の他の仕事で良い働きをするかもしれない。これはポジティブな結果である。ネガティブな結果としては、達成不可能なキャリアを目指し、関心や能力に沿わない教育を追い求めることになるかもしれないということだ」とホフ氏は述べる。
労働市場は急速に変化しているにもかかわらず、若者のキャリア目標が将来の仕事の予測にどのように対応しているのかについての研究はほとんど行われていない。「このようなキャリア開発研究は、個人と社会が将来の仕事のために準備するのを手助けする上でプラスの影響を与えることができる」とホフ氏は語る。
ホフ氏らの研究は子どもたちの野心を打ち砕くものではなく、職業志向に対する優れたバックアッププランの必要性を強調するものである。
「学生たちが一流のキャリアを積むことを奨励することは良いことだが、彼らが歳を重ねるにつれ、保護者、教師、カウンセラーは現実的であることも必要となる。どのくらいの人々が夢にみた領域で実際に仕事をしているのか、そのような領域での仕事を彼らが得られる可能性がどの程度あるのかについて理解するのを手助けするべきである」
ちなみに、芸術分野で働いているのは、米国人の2%に過ぎない。
出典は『キャリアアセスメント雑誌』。 (論文要旨)
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