2020.8.26
, EurekAlert より:
妊娠糖尿病を患った女性において、出産後の脂質代謝の乱れが2型糖尿病の発症を引き起こすようだ。トロント大学からの研究報告。
研究によると、細胞膜の成分となったり、エネルギーを貯蔵したり、細胞メッセンジャーを産生したりする脂質は、出産直後の女性における妊娠糖尿病から2型糖尿病への進展を予測できることが示唆された。この研究成果は、将来的に医師が妊娠後の2型糖尿病発症リスクを予期したり、予防的ケアを行ったりするのに役立てられる可能性があるという。
妊娠糖尿病は妊娠女性の1〜14%に発症する病態である。妊娠中の女性がインスリンを十分に産生できなくなることで生じ、治療を行わなければ危険域に達する高血糖となる。多くの女性は出産後に改善するが、3分の1以上が10年以内に2型糖尿病を発症し、その理由は明らかとされていない。「2型糖尿病の発症を予測し多くの症例を予防するために、女性たちの代謝の変化を明らかにすることは重要だ。」と筆頭著者のトロント大学ミ・ライ博士は話す。
ライ博士らは、妊娠糖尿病を患った出産6から9週後の女性350名から空腹時の血液を採取し、1,000種類以上の脂質を解析した。参加者の女性のうち、171名が8年以内に2型糖尿病を発症した。この結果、311種類の脂質が糖尿病発症リスクの上昇と関連し、70種類がリスク低減と関連していることが明らかになった。
研究チームは、出産後に血液中の脂質濃度が上昇する脂質異常が、体内で脂質の蓄積を促進するグリセロ脂質の代謝増加と、リン脂質、スフィンゴ脂質の抑制によって起こることを発見した。
「2型糖尿病の発症に先駆けて、脂肪の形成が増加しているようだ。」と共同責任著者のひとりフェイハン・ダイ博士は語る。「代謝物はリン脂質やスフィンゴ脂質から中性脂肪の形成へと変化し、これが糖尿病発症を促進させる。」
これに加えて、チームは、11種類の紙質の変化を検査することが2型糖尿病の発症を予測するのに役立つことを示した。これらの脂質の検査を、出産後の定期的な血糖値の検査と組み合わせると、2型糖尿病に進展する女性を特定するのにより有効だという。
「我々の研究は今後の研究の基盤となり、妊娠糖尿病から2型糖尿病への進展の予測を助ける新たな手法開発の可能性を示した。」もうひとりの共同責任著者マイケル・ウィーラー教授はこのように結論づける。「早期のリスク予測は、母親たちの糖尿病への早期介入と予防に役立つだろう。」
出典は『eLife』。 (論文要旨)
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