2020.7.10
, EurekAlert より: 
オーツ麦とライ麦のふすまに含まれる食物繊維は有益な腸内細菌を増加させ、コレステロール代謝の改善や腸管のバリア機能の向上、肝臓の炎症抑制、さらには体重増加の抑制につながる、という東フィンランド大学からの報告。これら2つの穀物の影響はやや異なるものの、どちらも健康に有益な効果が得られるようだ。
これまでにオーツ麦、ライ麦などの全粒穀物の健康効果については広く研究されてきており、人と動物両方の研究において、これらの摂取が炎症の抑制、糖や脂質の代謝改善などにつながることが示唆されている。さらに、全粒穀物は肥満、メタボリックシンドローム、循環器疾患、2型糖尿病などのリスク低下とも関連している。それぞれの食物繊維は異なる健康効果を有することが知られている。
オーツ麦、ライ麦の健康効果のメカニズムは十分に解明されていない。食物繊維は腸内細菌の機能を変化させ、腸内環境を良好な状態にすることが知られているが、いかにして代謝経路の調整に関連しているのかは明らかにされていない。この研究は、オーツ麦、ライ麦の食物繊維の摂取による腸内細菌による代謝産物の違いと、宿主の代謝応答への影響を調べることを目的に行われた。
この研究は動物実験で、マウスに17週間、10%のオーツ麦またはライ麦を含む欧米型の食餌を摂取させて行われた。数ある腸内細菌の代謝産物のなかで、研究者らは、多くの場合肥満を伴う脂肪肝の進行と関連が深いと考えられるものに着目し、盲腸の短鎖脂肪酸、回腸と糞便の胆汁酸、トリプトファン代謝に関連する遺伝子発現を測定した。
この研究の結果、2つの穀物はどちらも有益な腸内細菌の増加を助け、良好な腸内環境を形成することが示唆された。オーツ麦はラクトバチルス属の菌を増加させた一方、ライ麦を食べた群ではビフィドバクテリウム属が増加した。腸内細菌叢の変化により、オーツ麦群では胆汁酸に関連する受容体の機能、ライ麦群では胆汁酸の産生が調節され、コレステロール代謝が改善された。いずれの穀物も多くの短鎖脂肪酸を産生し、腸の健全化、肝臓の炎症抑制に働き、トリプトファン代謝経路をセロトニン合成から腸内のインドール産生に変化させた。これに加えて、オーツ麦とライ麦はどちらも、高脂肪食による体重増加を抑制した。
出典は『分子栄養と食物研究』。 (論文要旨)
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