2020.7.8
, EurekAlert より:
国で推奨されているレベルの身体活動量を維持している成人では死亡リスクが下がるようだ、という中国・山東大学などによる研究結果が報告された。
高強度の運動では軽度から中等度の運動を行うよりも若干効果は大きいものの、恩恵は運動強度に関わらず得られるようだ。
身体の不活動は世界的な公衆衛生上の問題となっている。2008年には世界の主要な非感染性疾患の6〜10%、早期の死亡の9%が運動不足によるものであり、2013年には不活動によるヘルスケア部門での損失は、世界で538億ドルにのぼると報告された。
身体活動が様々な慢性疾患の予防と死亡率の低下につながる可能性があるという科学的根拠が蓄積されており、各国政府が身体活動レベルの推奨値を設定している。
2018年に策定された米国のガイドラインでは、有酸素運動を中強度で少なくとも週に150分間、または高強度で週に75分間以上行うことを勧めている。同時に、成人は週に少なくとも2日以上、中〜高強度の筋力トレーニングを行うことを推奨している。しかし、これらの推奨値の遵守が死亡率の低下につながるかどうかの根拠は十分ではなかった。
そこで、2018年の米国ガイドラインで示されている十分な量の身体活動と、全死亡および8種類の死因 (循環器疾患、がん、慢性下気道疾患、事故・怪我、アルツハイマー病、糖尿病など) による死亡との関連性を明らかにするための国際的な研究チームが立ち上げられた。
チームの研究は、米国の18歳から85歳のうち、1997年から2014年の全国健康聞き取り調査 (National Health Interview Surveys) で週あたりの運動量が聴取できた479,856人のデータと、過去平均9年間の全国死亡データとを紐付けて行われた。
調査期間中、推奨身体活動レベルを完璧に遵守できていたのは16% (76,384人) にとどまり、59,819人の死亡が観測された。
身体活動レベルが推奨値に届かない者に比べると、十分な筋力トレーニングを行っている者では11%、十分な有酸素運動を行っている者では29%、全死亡のリスクが低下した。また、筋力トレーニングと有酸素運動のどちらも遵守できていた者においてはより大きな効果が見られ、全死亡リスクが40%低下した。
さらに、十分な有酸素運動を行っている者では8種類の死因すべてでリスク低下がみられ、筋力トレーニング量を遵守している者では循環器疾患、がん、慢性下気道疾患による死亡リスクが低下した。
この研究は観察研究であるため因果の証明はできず、身体活動量は参加者の自己申告によるものである。この一方で、米国民を代表する十分なサンプルサイズであること、ライフスタイルや慢性疾患の有無などの予想される交絡因子が調整されていることなどの強みがある、と研究者らは強調している。
「我々の研究は、2018年の米国民のための身体活動ガイドラインにおける身体活動レベルの遵守が長寿のために重要であることを支持している。加えて、ガイドラインで推奨されている最小限の運動よりも多くの身体活動を行うことで、より大きな健康効果を得ることができるだろう。」
出典は『英国医学雑誌(BMJ)』。 (論文要旨)
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